数年前の風光明媚なある秋の日、郵便受けを開けて聖書のように分厚い封筒を取り出した。それが私の人生を変えることになる。その小包はバーテックス・ファーマシューティカルズ(Vertex Pharmaceuticals)からのもので、鎌状赤血球症の治療に向けた、新たな遺伝子編集薬の治験に参加する際に提出する同意書が入っていた。
その1週間前、妻と私はテネシー州ナッシュビルに住んでいる腫瘍学者兼血液学者で、今回の治験の研究主任であるハイダー・フランゴール医師と電話で話をした。博士は治験に伴う影響と、初期参加者の様子について概要を説明してくれた。気がついたときにはもう、すぐに登録して治療を始めるため、妻と私は飛行機でナッシュビルの研究施設に向かっていた。当時、妻は第一子を妊娠していた。
私は生まれつき鎌状赤血球症を患っており、慢性的な疼痛、臓器障害、そして絶望感に苛まれてきた。今回の話は、ついに自分の人生をコントロールし、存在感ある父親になれる絶好のチャンスだったのだ。
私に投与された薬剤である「exa-cel」とは、CRISPR(クリスパー)を利用した遺伝子療法の中でも、近いうちに米国食品医薬局(FDA)に初めて承認される可能性があるものだ。米国が承認すれば、11月中旬に英国が承認したのに続くことになる。私はその治療を受けたわずか数十人の患者のうちの1人だ。10月下旬、FDAの諮問グループがエビデンス(科学的根拠)を評価するために開催した会合で、私は承認に賛成すると証言した。exa-celに関する当局の最終判断は、遅くとも12月8日までに下される予定だ。
私は自分が非常に特権的な立場にいることを自覚している。この画期的な新しい治療を早期に受け、恩恵にあずかることができたのだから。鎌状赤血球症の患者は正常なヘモグロビンを生成しない。ヘモグロビンとは、赤血球が体内で酸素を輸送する際に使用するタンパク質だ。それが不足することで異常な形状の赤血球が発生し、血管を詰まらせ、激しい疼痛や臓器不全を引き起こす。この病気の患者は、そうでない人々よりも数十年寿命が短くなることが多い。
exa-celの治療法を受けて以来、夢見ていたことが現実となり始めた。無限にあふれるエネルギーと、眠るだけで回復する体力。機能不全の赤血球を急速に分解することで引き起こされる黄疸などの身体症状は、実質的に一夜で消失した。そして最も重要なことは、鎌状赤血球症によって家族と引き離されることはないという自信と、己の運命をコントロールできるという感覚を手に入れたことだ。
現在、ブルーバード・バイオ(Bluebird Bi …