AI画像生成のエネルギー消費量、スマホのフル充電に匹敵
ハギング・フェイスとカーネギー・メロン大学の研究グループは、生成AIモデルによるエネルギー消費量と二酸化炭素排出量を調べた研究成果を発表した。特に画像生成モデルでは大量のエネルギーを消費することが分かり、モデルの訓練だけでなく「使用」時の省エネ化が課題として浮き彫りになった。 by Melissa Heikkilä2023.12.14
人工知能(AI)を使って画像を生成したり、メールを書いたり、チャットボットに質問したりするたびに、地球に負担をかけている。
AIスタートアップ企業のハギング・フェイス(Hugging Face)とカーネギー・メロン大学の研究グループの新しい研究によって、強力なAIモデルを使用して画像を生成するには、スマートフォンをフル充電するのと同じくらいのエネルギーが必要なことが明らかになった。ただし、AIモデルでテキストを生成するだけなら、エネルギー消費が大幅に少なくなることも分かった。AIモデルでテキストを1000回生成しても、消費するエネルギーはスマホのフル充電の16%ほどにとどまる。
この研究成果はまだ学術誌の査読を受けてはいないが、信じられないほどのエネルギーを消費することで知られてきた大規模なAIモデルの訓練が、問題の一部にすぎないことを示している。AIモデルが排出する二酸化炭素のうち、大部分はモデルの訓練ではなくユーザーが利用するときに発生するのだ。
研究を主導したハギング・フェイスのAI研究者のサーシャ・ルッチョーニによると、さまざまなタスクにAIモデルを使用することで生じる二酸化炭素排出量を計算した研究は、今回の研究が初めてだという。ルッチョーニは、AIモデルによる二酸化炭素排出量について理解することで、より地球に優しい方法でAIを使用するための、十分な情報に基づく意思決定ができるようになると期待している。
ルッチョーニの研究チームは、質問応答、テキスト生成、画像分類、キャプション、画像生成など、ハギング・フェイスのプラットフォームで利用できる10種類の人気のAIタスクに関連する二酸化炭素排出量を調査した。今回の研究では、88種類のAIモデルを対象とした。ルッチョーニは、テキスト生成などの各タスクで1000回のプロンプトを実行し、今回の研究のために開発した「コード・カーボン(Code Carbon)」と呼ぶツールでエネルギー消費量を測定した。コード・カーボンは、モデルの実行中にコンピューターが消費するエネルギーを調べることで、AIモデルによる排出量を計算する。また研究チームは、さまざまなタスクを実行するように訓練された8つの生成モデルを使って、これらのタスクを実行することによって排出される二酸化炭素量を計算した。
画像の生成は、AIモデルが処理するタスクの中でも、エネルギー消費量と二酸化炭素排出量が飛び抜けて多いタスクだった。ステーブル・ディフュージョン(Stable Diffus …
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