メタマテリアルで再発明された合成開口レーダーは低コスト
一度に広範囲を探知できるメタマテリアル製合成開口レーダーが発明された。偵察衛星や気象衛星を小型化し、詳細画像をあとから生成できるなど、レーダー画像の使い方も変化しそうな発明だ。 by Emerging Technology from the arXiv2017.03.13
合成開口レーダー(synthetic aperture radar:SAR)は、レーダー波の反射で高解像度の2次元または3次元画像を生成する、優れた画像化手法だ。可視光ではなく、電波やマイクロ波を使うので、薄霧や雲、場合によっては壁があっても遠くにあるモノを検出できる。この長所を活かして、地球の観測や保安検査、国家的なスパイ活動でも頼りにされている。
しかし、合成開口レーダー・システムは、電力を大量に消費する巨大装置になりがちで、検出したい方向に装置を向ける操舵装置付きの場合、機械的にも複雑になる問題がある。建設には多額の費用が必要で、合成開口レーダーの所有者は主に、予算に余裕がある軍隊や政府機関に限られる。
したがって、システムを小型化し、低価格かつ効率の高い合成開口レーダーを構築できる方法があれば、各方面に影響があるはずだ。
3月10日、デューク大学(ノースカロライナ州ダーラム)のティモシー・スリースマン研究員のチームは、合成開口レーダーを小型化できるシステムを初公開した。研究チームの合成開口レーダーは、新しいメタマテリアルを素材として採用することで、既存のシステムよりも低価格で、用途を拡大し、効率を高くできる。しかも画像品質は従来型の合成開口レーダー・システムと同等なのだ。
ここでレーダー・システムについておさらいしておこう。レーダーは、パルス波を断続的に放射し、周囲から反射してきた信号を記録し、反射で返ってきた信号の時間の差を利用して画像を生成する。解像度は受信機の大きさによって決まるため、跳ね返ってくる電波をより多く収集するには、単純なアンテナよりも、面積が巨大な反射皿を使うことになる。したがって、反射皿の面積が広いほどレーダーの解像度は高い。
しかし1950年代、アメリカの航空宇宙エンジニアは、信号の受信感度を高める別の手法を発見した。受信中にアンテナを移動させるのだ。
受信中にアンテナを移動させるために、この手法ではアンテナを航空機や宇宙船に搭載する。送信された無線パルスは電波が届く範囲にある地上物に反射する。反射した信号は移動後のアンテナに送り返されてくる。信号が返ってくるまでにアンテナが移動した距離分、受信口径が大きくなり、レーダー・システムの解像度が向上するのだ。
当然、2次元や3次元の画像を生成するには、返ってきた信号を処理するための強力な計算力 …
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