米国では「インフレ抑制法(Inflation Reduction Act)」をはじめとする包括的法案により、数千億ドルが新たな気候・エネルギー関連テクノロジーへと流れ込み、研究、開発、導入の資金となっている。だが、金が流れ始める中で、最も恩恵を受けるのは誰か、予期せぬ影響の矢面に立たされる可能性があるのは誰なのか、といった問いへの答えは出ていない。
米国エネルギー省(DOE)経済影響・多様性局のシャランダ・ベイカー局長が、マサチューセッツ州ケンブリッジで開催されたMITテクノロジー主催のイベント「クライメート・テック(ClimateTech)」で講演し、気候変動と衡平性の実現に同時に取り組むことの必要性や、エネルギー移行が実施される中で正義を求めることの可能性について語った。
講演後、ベイカー局長は対談に応じ、いかにして新たなテクノロジーの恩恵を分配し、新プロジェクトへのコミュニティの懸念に対応していくのかを語った。
なお、以下のインタビューは、発言の趣旨を明確にし、長さを調整するため、編集されている。
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——あなたはご自身のセッションで、気候変動と不平等が交差する状況について少しお話されていました。気候変動と不平等への取り組みを同時に進展させることができる、明確な例をいくつか挙げていただけますか。
低所得者層向けの税額控除プログラムを挙げたいですね。これは太陽光、風力、クリーン・エネルギーへの投資に対する20%の追加税額控除です。
プログラムの担当トップとして、財務省との連携で当局がこのプログラムを主導することに非常に気持ちが高ぶっています。この9カ月ほど、私たちはあるプログラムを設計してきました。このプログラムが低所得世帯に実際に影響を与え、彼らが地域エネルギー、屋上太陽光発電、小規模風力発電などを通じて太陽光や風力にアクセスできるようになると考えています。
このアクセスの実現は当然ながら気候問題の解決に有効です。成功すれば低所得世帯の総合的なエネルギーコストを減らし、そうしたコミュニティに実際に真の経済的恩恵をもたらせます。
——私たちはクリーン・エネルギー技術の多くがコミュニティにとって良いものだと考えています。例えば、安価な電力にアクセスしやすくなることは、言うまでもなく良いことです。しかし水素ハブや二酸化炭素除去など、特に依然として化石燃料が関わるプロジェクトは環境に影響を与える可能性もあり …