気候テック15:鉄鋼の脱炭素を牽引するH2グリーン・スチール
鉄鋼を製造する工程では、大量の二酸化炭素を排出する。MITテクノロジーレビューが選ぶ「気候テック企業15」の1社であるH2グリーン・スチールは、再生可能エネルギーと水素を活用して、排出量を最大95%削減する新しい製鉄所を建設中だ。 by James Temple2023.10.16
2022年7月、H2グリーン・スチール(H2 Green Steel)は、世界初の商業規模のクリーンな製鉄所を着工した。世界で最も二酸化炭素排出量の多い産業部門の一つを改革する上で画期的な出来事となった。
同社によると、スウェーデンのボーデンに建設中の製鉄所では、2026年までに250万トンの鉄鋼を製造し、従来の製鉄所と比較して二酸化炭素排出量を最大で95%も削減する予定だという。製造量の半分は、BMWやメルセデス、穀物大手のカーギル(Cargill)などへの納入がすでに決まっているという。
鉄鋼は鉄鉱石から酸素を除去し、他の金属と炭素を加えることで製造できる合金であり、高層ビルや橋を支えるのに十分な強度と弾性を持つ。しかし、最も一般的な製鋼法は、大量の二酸化炭素を排出する。地球を温暖化させる二酸化炭素は、鉄から酸素を取り除くために使使用する石炭由来のコークス、製造工程中の他の化学反応、そして炉を加熱するために燃やす化石燃料から発生する。
これに対して、H2グリーン・スチールは、スウェーデン北部の豊富な水力発電と風力発電の資源を活用し、世界最大級の電解槽(水分子を分解してクリーンな水素を生成する装置)を稼働させる予定だ。水素は再生可能エネルギーを利用する製鉄所に流れ込み、加熱された鉄ペレットから酸素を取り除くコークスに代わる役割を果たし、副産物として二酸化炭素の代わりに水を生成する。そこからさらに、炭素と合金を加えて鉄鋼を強化・精製し、ガスを除去するいくつかの電化工程を経る。
H2グリーン・スチールは当面、溶融金属に炭素を添加する工程で天然ガスに依存することになるため、このプロセスでも若干の二酸化炭素は排出される。
同社は、プロジェクトのために35億ユーロ(37億ドル)以上の資金を借り入れで確保し、自社株との引き換えで18億ユーロ …
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