マイクロソフトがクラウド向けハードウェアに搭載する半導体をインテルから切り替えようとしており、インテルの支配力がさらに弱まる可能性が出てきた。
ブルームバーグによると、マイクロソフトは、ARM(英国に本社があるチップ設計会社で、製造はライセンスを受けた別の会社)が設計したプロッセッサーを搭載したサーバーで、マイクロソフトのクラウド・システム「アジュール(Azure)」の動作を試験中だ。サーバーは機械学習やビッグ・データ分析、ストレージ等の用途向けに試験中で、顧客向けにサービスを提供する目的ではまだ使われていない。ARM設計のチップは消費電力が少なく、複数のメーカーが製造しており、マイクロソフトの狙いはCPU供給元の変更で費用を削減し、価格競争力を維持することだ。
現在、サーバー向け半導体市場のほとんど全てはインテルが握っている。マイクロソフトがARM製チップをどれだけの範囲で採用するのかは不明だ。しかし、マイクロソフトのアジュール部門の責任者であるジェイソン・ザンダーは、ブルームバーグのインタビューに答えて、新たにARM製チップを使うことに対して、マイクロソフトは「熱心に取り組んでいる」と述べた。また、ブルームバーグによると、マイクロソフトが考案した新たなクラウド・サーバーの設計にはARM製のチップが組み込まれるという。この設計は将来オープンソース化される予定で、他の企業も利用できる。
ARMはエネルギー効率の高さで評価が高く、現在はモバイル機器向けプロセッサー市場を支配している。しかし、ARMはインテルの牙城であるスーパー・コンピューター分野にも進出している。すでにスーパー・コンピューター向けに設計された新たなチップ・アーキテクチャを開発し、富士通は次期「プロジェクト京」のスーパー・コンピューターの開発にARM製チップを使うと発表した。
ARMはソフトバンク(日本の通信インターネット会社)に昨年320億ドルで買収されて以来、インテルを取り巻く状況を悪化させるだけの目的で積極的に投資している。ARMは2021年までに英国の従業員を1600人から3200人まで倍増させる計画だ。また、ちょうど先月には、今後20年間で約1兆個のIoT機器向けチップの販売を見込んでいると発表した。一方で、他のチップメーカー(エヌビディアのような評価の高い企業からナーバナのような新興企業まで)は機械学習に特化したチップセットでインテルに挑んでいる。
一方、インテルは積極的にイノベーションを試みており、独自の量子テクノロジーや光コンピューティング・ハードウェアを懸命に開発中だ。しかし、マイクロソフトの動きを考慮すると、近い将来、インテルは主要事業の売上高の一部を他社に奪われることになりそうだ。
(関連記事:Bloomberg, Reuters, “Intel Outside as Other Companies Prosper from AI Chips,” “孫正義の野望が見えた! ARM買収でインテル超え,” “ソフトバンクのARM買収で インテル困ってる”)