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中国テック事情:自動車産業とテック産業の融合進む中国
AP Photo/Ng Han Guan
China’s car companies are turning into tech companies

中国テック事情:自動車産業とテック産業の融合進む中国

電気自動車の製造と導入で他国を一歩リードした中国では、自動車企業がテック企業に変貌を遂げつつある。そしてテック企業もまた、自動車企業になることを目指している。 by Zeyi Yang2023.09.04

この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。

今年中国で自動車を購入する人は、「先進NOA(Navigation on Autopilot)システムがどのように都市で使用できるようになるか」という売り込みをひっきりなしに受けている。ハンドルはまだ握っていなければならないので、NOAシステムはまだ完全な自律運転とは言えないが、都市部ではこのシステムによる自動車の自動停止、自動ハンドル操作、自動加速が可能だ。

電気自動車(EV)メーカーと人工知能(AI)スタートアップ企業はどちらも、「都市NOAサービス」の全国展開に向けた積極的なロードマップを発表しており、「中国の数十から数百の都市に住む顧客たちは、まもなく街の狭い通りを自動車に運転させるという体験ができるようになる」と主張している。

自動運転機能で競争激化、中国では「市街地」が主戦場に」という記事を先日、公開した。実際の性能や、ドライバーに責任を持ってシステムを利用させるための教育の難しさなども詳しく取り上げている。記事全体はこちらで読める

中国の自動車産業アナリストであり、黄河科技学院の客員教授でもあるチャン・シャンへのインタビューでは、あるコメントが印象に残った。「自動車産業は今、非常に競争が激しい。消費者は、自動車がスマホのようなハイテク製品になることを期待している。自動車ブランドがそう宣伝しなければ、車の販売は難しいでしょう」というものだ。

チャン客員教授の見解は、今年私が目の当たりにしたこと、特に今年4月の上海モーターショーで目撃した光景とも一致している。どの企業も、自社ブランド車の自律運転機能を自慢するだけでなく、他にもあらゆる最新ソフトウェア機能を披露していた。

たとえば、AI企業のセンスタイム(SenseTime)は、顔認識技術でドライバーの疲労状態を監視し、車内に置いていかれた子どもを認識。上汽大衆汽車(SAIC Volkswagen)は、AR(拡張現実)機能でフロントガラスに地図情報を表示していた。バイドゥ(Baidu:百度)は、ルート作成のために車載音声チャットボットに生成AIモデルを組み込んでいる。

中国の国産EV業界のフロントランナーの1社であるニオ(NIO)は、サブスクリプション・モデルを採用している。ニオ車のオーナーは月額380人民元(52ドル)を支払えば、高速道路や主要都市道路で使えるNOAシステムのベーシック版を自分の車に搭載できるのだ。将来は、倍の金額を支払って上位版に切り替えることもできる。一方で、バッテリーにかかる費用がEVのコストと維持費の大半を占めることから、ニオは中国で、毎月一定額を支払うと利用できるバッテリー交換サービスを、そして欧州では月額の支払いで利用できるバッテリー・レンタル・サービスを開始した。

上記の例は全て、自動車企業がテック企業に変貌しつつあることを示している。各企業は今や、内装や外観のデザインや馬力だけを競っているのではない。どの企業が最新テクノロジーを消費者向け製品に搭載できるかを競っているのだ。世界的に見ると、このトレンドを先導しているのはテスラで、従来の自動車メーカーが徐々にキャッチアップようとしている形だ。しかし中国では、このスピードがさらに速まっている。

輸送産業向けビジネス・コンサルティング会社であるシノ・オート・インサイツ(Sino Auto Insights)のツー・レ社長は、現在進行中の自動車業界における進化を「電化」「スマート化」「サービス化」「自律化」という4段階に分類する(初めの2段階は分かりやすいだろう。第3段階は「自動車企業のビジネス・モデルがサービス販売を中心に稼働する」ことを、第4段階は「ロボットタクシーの普及」を指している)。

別の記事にも書いたが、中国は政府補助金やバッテリー技術革新となど、さまざまな要因により、EVの開発と導入で他国を大きく引き離すことに成功している。そのおかげで、中国の自動車産業は他国より早く次の段階に移行できるようになった。「現在、米国と欧州は『電化』の第1段階だが、中国は『スマート化』の第2段階だ」と、ツー社長は言う。

「第3段階への移行は、そう遠い先の話ではない」と、ツー社長は考えている。「中国を走るEV車に、有料または無料のADAS(先進運転支援システム:Advanced Driver-Assistance Systems)がどんどん搭載されていけば、『サービス化』の段階に入るでしょう。そうなれば、さらに機能を追加して有料化しようとするでしょう」。

中国では、自動車企業がテック企業になりつつあるだけではない。テック企業もまた、自動車企業になりつつある。検索エンジン企業からAI企業に転向したバイドゥ(Baidu:百度)が今もっとも注力している技術の1つは「自律運転」だ。中国の大手スマホ企業であるシャオミ(小米:Xiaomi)も、EV企業になるために10億ドル近くを投じている。米国の制裁のせいで自己改革を余儀なくされたファーウェイ(華為:Huawei)でさえ、次の戦略焦点として「スマート自動車」をターゲットに掲げている。

このような巨大テック企業が競争に加わったため、中国の自動車企業は競争の機会を得るために、技術力を高めるゲームへの参加を余儀なくされている。

最終的に、それは良いことなのだろうか。まだ分からない。中国の自動車企業は激しい競争のせいで、より高度なテクノロジーを投じた製品を手頃な価格で提供せざるを得なくなっている。そして、消費者はその恩恵を受ける立場にある。しかしそのせいで、データ・セキュリティ、プライバシー侵害、AIによるバイアスや失敗など、テック業界が対処できずにいる難しい問題も同時に招いてしまうかもしれない。

しかし、これは避けられない傾向のように思われる。そういった意味で、中国で今起きていることは、他国の自動車産業界にとっては貴重な教訓になるだろう。

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中国当局が贈収賄容疑で医療機関に厳しい目

反腐敗運動が中国の医療・製薬業界を揺るがしている。中国の雑誌「藍鯨財経(Lanjing Caijing)」によれば、中国トップ腐敗防止規制当局はここ数カ月、保健医療分野における贈収賄事例を公表しているという。中国のほとんどの病院は公営であるため、製薬会社が病院幹部に賄賂をわたし、研究のスポンサー、学術会議の主催、キックバックの支払いなどを通じて調達契約を獲得したかどうかが調査の焦点となる。

このような調査は目新しいものではないが、今年は特に強化されているようだ。中国ではこれまでに少なくとも160名の病院幹部が調査対象となった。これは2022年全体の2倍に当たる数字だ。こうした賄賂は企業の会計帳簿に「マーケティング費用」として計上されることが多いため、マーケティング費用が特に多かった企業は現在、厳しい監視下に置かれている。各企業の財務開示によれば、2022年度は中国の製薬会社の上位66社のうち40社近くが年間収入の半分をマーケティング費用に費やしていた。

あともう1つ

エアロバイクで運動する人々は、実質現実(VR)による政治プロパガンダ教育を見たいと思うのだろうか。ある中国企業は最近、ペダルを漕ぎながら中国共産党の歴史を読むことができる教育機器「共産主義VRライド」の映像を投稿した。実際、過去に同様の製品を発売した中国のVR企業はかなりの数にのぼる。このニッチ産業は、どうやら盛況のようだ。

Three people riding on different VR stationary bikes designed for Chinese Community Party history education.
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ヤン・ズェイ [Zeyi Yang]米国版 中国担当記者
MITテクノロジーレビューで中国と東アジアのテクノロジーを担当する記者。MITテクノロジーレビュー入社以前は、プロトコル(Protocol)、レスト・オブ・ワールド(Rest of World)、コロンビア・ジャーナリズム・レビュー誌、サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙、日経アジア(NIKKEI Asia)などで執筆していた。
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