シリコンバレーのベンチャーキャピタリストや創業者たちにとっては、不便なことは、それが大きなことでも小さなことでも、すべて解決すべき問題である。それが死そのものであってもだ。遺族を助け、その苦しみを慰めることを目的とする「デステック」と呼ばれる新たなジャンルの製品やサービスは、テック業界が文字通り何でもアプリを使って対処しようとすることを示している。
カリフォルニア州オークランドを拠点に活動するテクノロジストであり、作家であり、オーガナイザーでもあるシャオウェイ・ワンは、そのことを不愉快に感じている。
「そのような人々を問題と見なすことは、とても不快です。死のような状況や人生の避けがたい当然の事実を、問題と見なすなんて」。今年3月下旬、オークランドの醸造所の裏庭にあるパティオでビールと昼食をとりながらワンはそう話した。終末期ケアにおけるテクノロジー利用に関する近刊予定のある本を研究するため、「看取りのドゥーラ(終末期の患者とその家族を支援するボランティア)」の訓練を受けたワンは、近々ホスピスで働き始める予定だ。
個人的かつ政治的な意味あいに根ざすテクノロジーを模索するワンのアプローチは、テック人材やテック業界全体に対するより広いビジョンの良い実例となる。つまり、多様な背景を持つ人々により多くの力と行為主体性を与え、搾取的ではなくより衡平になり、株主を富ませることではなく構造的な不平等を減らすことを目指すという願望の好例になるだろう。
このビジョンを実現するために、ワンは、 テック人材が世界に与える自分自身の影響と向き合い始めることができる共同学習プロジェクト、「コレクティブ・アクション・スクール(Collective Action School、集団行動学校)」を立ち上げた。その願いは、業界内でより多くの労働組織化を促し、巨大企業へ対抗することを怖がるかもしれない労働者に力を与えることである。
ワンは、2016年に創刊された独立系雑誌『ロジック(Logic)』の編集者として注目されるようになった。人々は当時、トランプ時代初期の不安感と増大するテクノロジーの力に関する懸念の真っただ中にあった。ユートピア的な進歩の物語を拒否し、不衡平を拡大し政治権力を集中させるテクノロジーの真の役割を先見的に分析するため、ベン・ターノフ、ジム・フィンガル、クリスタ・ハートソック、モイラ・ウェイゲルら創刊メンバーは、「重要なことについて愚かな会話」をすることを止めると誓った(同誌は1月に、ワンとJ・カディジャ・アブドゥラーマンを共同編集者とする「初の黒人、アジア人、クィアによるテック雑誌」としてリニューアルされた)。
当初は「ロジック・スクール(Logic School)」という名称だったコレクティブ・アクション・スクールは、この雑誌から派生したものである。この学校は、テック業界におけるスキャンダルや大量解雇が、暗号資産のトラブルやAIのバイアスに関する新たな懸念と相まって、巨大テック企業の欠陥のすべてがますます露呈している時に創設された。ズームを介して提供される授業では、ワンらが務める講師陣が、労働組織化、領域交差的なフェミニズム理論、巨大テック企業の政治的・経済的意味合いに関するテキストを通して、およそ20人のテック人材、コーダー、プロジェクト・マネージャーを指導する。現在は第2期生までがプログラムを修了している。
ワンとの昼食には、最後のセッションの運営を手伝ってくれた3人の元学生も同席していた。上級ソフトウェア・エンジニアのデリック・カー、ツイッターで信頼・安全性エンジニアを務めたエミリー・チャオ、UXデザイナーのインディ・ペイである。彼らは皆、しばしば発言に制約と制限があるように見える既存の企業従業員が参加するグループよりも、もっと具体的な変革につながる可能性のある何かを生み出したいという願望を共有していた。巨大テック企業はカリスマ的な創業者に執着することがあるのに対し、コレクティブ・アクション・スクールは集団的な方法で運営されている。「目立たないように活動することを楽しんでいます」と、ワンは言う。
クィアとして「彼ら(they)」という代名詞を使うワンは、4才だった1990年に、中国からマサチューセッツ州サマービルに引っ越してきた。幼い頃に科学やテクノロジーに引きつけられたワンは、初期のオンライン・チャット …