猛暑で需要急増のエアコン、さらなる省エネ化がカギに
持続可能エネルギー

Why air-conditioning is a climate antihero 猛暑で需要急増のエアコン、さらなる省エネ化がカギに

地球上の多くの地域が前例のない猛暑に見舞われており、身を守るにはエアコンが欠かせないものになっている。今後全世界で、エアコンを設置する世帯は急増していくが、電力供給量は追い付くのだろうか。 by Casey Crownhart2023.08.08

この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。

この夏の終わりのない暑さで、私の部屋の窓に取り付けられたエアコンは激しく稼働し続けている。今月の電気代がどうなるか特に考えていない時でも、気候問題に関するテクノロジーとしてのエアコンが、いかに 両刃の剣であるかについては考え続けてきた。

地球上の至るところで気温が上昇しており、ほぼすべての大陸で最高気温の記録が塗り替えられている。このように気温が極端に上昇する中、エアコンは地域によっては「あったらいいもの」ではなく、絶対になくてはならないものになっている。

しかし一方で、電力需要という観点で考えると、エアコンは怪物のような存在になりつつある。今後数十年以内に稼働を始めるすべてのエアコンに電力を供給するためだけに、米国の送電網全体の電力供給に相当する電力量を新たに用意しなければならないかもしれない。

地球温暖化が進むにつれ、夏の猛暑にも拍車がかかっている。そこで今回は、気候問題とその解決策であるエアコンについてお話ししたい。

涼をとる

米国ではどこに行ってもエアコンがある。夏のオフィスやレストランはエアコンが効きすぎて寒いのではないかと心配し、セーターを持ち歩くほどだ。

しかし、猛暑発生リスクが最も高い数カ国に限らず、世界の多くの地域では、エアコンなしで過ごしている人が大多数だ。インドでは、エアコンのある世帯は全体の約5%に過ぎない。国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)によれば、世界で最も暑い地域に住む28億人のうち、エアコンを利用できるのはおおよそ10人に1人だ。

こうした状況は今後数十年の間に変わりそうだ。空調機器の世界シェアでトップを争う数社が、アジアとアフリカの成長市場に狙いを定めているからだIEAによれば、2050年までに世界の3分の2以上の世帯がエアコンを利用できるようになり、そのうち半分は中国、インドネシア、インドの 3カ国に設置されると見込まれている。

より多くの人々が冷房を利用できる環境が絶対に必要だ。気候変動による熱波の発生がどんどん日常になっていき、その程度も激しくなる中、冷房の普及により人々の命が救われるだろう。しかしながら、エアコンを増設していくと問題も起こる。電力需要が「大幅に」増加するのだ。

現時点から2050年までに予想される電力需要増加分のうち、40%近くを冷房による需要増加が占める。

2018 年、全世界で約2000テラワット時(TWh)の電力が冷房に使われた。2050年にはこれが、6200テラワット時にまで達する可能性がある。増加分の4200テラワット時は、米国の送電網全体が供給した電力量にほぼ相当する。従って、状況に変化がなければ、まだ送電網につながっているすべての化石燃料発電所を置き換え、なおかつ大量のエアコンに電力を供給できるくらいに、再生可能エネルギーを利用した発電所を十分増やしていかなければならない。

最新状況

吉報もある。空調技術には改善の余地が大いにあるのだ。

私は最近、「世界冷房技術賞(Global Cooling Prize)」という大規模コンテストの開催を支援した アンキット・カランキに話を聞いた。カランキはエネルギー問題を扱う非営利のシンクタンク、ロッキー・マウンテン研究所(Rocky Mountain Institute)でカーボンフリー建築プログラムの部長も務めている。

2021年に終了した世界冷房技術賞には、学術界や産業界から、建物を冷却するより良い方法を考案した複数のチームが参加し、優秀なチームに賞金が授与された。コンテストの目標は、従来のエアコンに比べて気候に与える影響を5分の1に抑え、なおかつその他多くの要求を満たす冷却システムを作ることだった。

決勝に進んだ8チームが考案した手法は、それぞれまったく異なるもので、既存のテクノロジーを改良するチームもあれば、新しい冷却方法を完全にゼロから模索するチームもあった。

優勝した2チームは既存のエアコンの改良版を作ったが、それは蒸気圧縮システムと呼ばれるものだった。一部の部品をより優れたもの(より高効率な熱交換器、可変速コンプレッサーなど)に交換することで、 この2チームは現在使用されているエアコンよりも大幅に効率の良い改良版を作り上げたのだ。

一方で、決勝に進んだ他の数チームが試みたのは、建物を冷却する既存の方法を組み合わせるアプローチだ。気候目標やその他の基準を満たせなかったが、カランキ部長はいずれも「とても興味深く革新的な手法」だったと述べている。

決勝に進んだチームのうち数チームは、スタートアップ企業だ。彼らはスポンジのように空気中の水分を吸い取ることができる「乾燥剤」に注目している。このような材料を使って湿気に対処することで、冷却装置が消費する電力量を大幅に削減でき、暑い日でも快適に過ごすことができる。

最新記事に向けた準備で、乾燥剤を使用したこれらの冷却システムについて詳しく調べてみた。これらの材料が住宅や商業ビルで実用化されるのはまだまだ先のことだが、どのようにして機能するのか物理的視点で考えると、とても興味深い。さらに詳しく知りたい方は、こちらの記事で詳細を確認いただきたい。また、エアコンが抱える差し迫った問題と、いくつかの解決策候補の詳細については、本誌の他の記事をご覧いただきたい。

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昨年の夏、欧州で発生した夏の熱波と、エアコンの増設が欧州大陸にもたらす影響について記事を掲載している。

2020年、本誌のジェームス・テンプル編集者は、エアコンがどれほど大きな問題になりつつあるかについて記事にまとめた。

テンプル編集者はまた、圧力や電界の影響を受けたときに熱を放出する性質を持つ熱量材料が、どのようにして建物を冷却するのかということも紹介している。

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