グーグルがねつ造ニュース対策でフェイスブックより及び腰の理由
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Google’s Algorithms May Feed You Fake News and Opinion as Fact グーグルがねつ造ニュース対策でフェイスブックより及び腰の理由

フェイスブックがねつ造ニュース対策に乗り出した。最初の一歩としては評価できる一方、グーグルの音声アシスタントは女性蔑視の意見を言いだし、YouTubeはねつ造動画の宝庫になっている。 by Jamie Condliffe2017.03.07

フェイスブックのねつ造ニュース対策に一定の効果が確認され、議論の焦点はグーグルがどう対処するかに移った。

今回の米国大統領選挙の結果を受け、ねつ造ニュースの台頭に対処できていない、とフェイスブックは社会全体の怒りにさらされた。実際にねつ造されたニュースが選挙結果にどう影響をおよぼしたかを検証するのは困難だが、継続的なデマにさらされた有権者の判断に一切影響していないはずはない。フェイスブックはすでに第三者の事実確認団体に依頼し「真偽不明」とタグ付けする方針を発表していた

今週になって、フェイスブックは約束を実行し、期待通りに動作すると評価するユーザーもいる。フェイスブックは疑わしい投稿をスノープスポリティファクトABCニュースFactCheck.orgといった事実確認団体に依頼し、真偽を分析してもらっている。依頼先の2社以上が投稿の事実性に異を唱えると「事実確認団体による審議中」と表示され、あとはユーザーの判断に任される。

問題はこれで解決だろうか? そうともいえない。デマはまだ流れている。フェイスブックの後は、グーグルが自社の機能をねつ造ニュース問題に前向きに取り組む番だ。

日曜日にジ・アウトラインが公開した記事によれば、グーグルの「強調スニペット」(検索結果に枠付きで表示される要約付きの欄)は本来の役割を果たしていないようだ。スニペット機能はもともと、グーグルの検索エンジンやAI音声アシスタントで検索したとき、適切な答えをすぐに得るためにある。しかしアクセス数の多いWebページを役に立つとみなし、優先して表示するため、必ずしも正確な内容とは限らない問題がある。

ジ・オンラインによると、強調スニペットにはさまざまな主張が表示される。ウォレン・ハーディング第29代米国大統領(任期1921年~1923年)が白人至上主義秘密結社クー・クラックス・クランのメンバーだった(虚偽と判明)とか、バラク・オバマ前大統領がクーデターを計画した可能性がある(保留中)とか、さらには「女性は邪悪な存在か否か」の問いに対して、かなりよろしくない見解を音声合成で答えてしまった。どの場合も、Googleが表示・出力した答えの出所は、信頼できる情報を探す目的では利用されないWebサイトだった。

Webの場合、Googleの検索結果には少なくとも情報の出所が表示され、誤りや不適切な場合には報告できる。BBCの記事によれば、誤りの一部は修正済みだが、音声アシスタントは答えを音声合成で出力するだけで、出所を付け加えたり、誤りがある場合はお知らせください、と案内したりしない。

グーグルは強調スニペットの提供を中止しないだろう。特に音声アシスタントについては、MIT Technology Reviewのトム・サイモナイト記者が以前指摘したとおり、グーグルにとって、音声アシスタントAIの検索機能は、アップルのSiriやアマゾンのアレクサといった競合製品に対する、重要な差別化機能であり、断固拒否するはずだ。実際、グーグル・アシスタントのWeb検索機能は他社よりも優秀だ。しかし、インターネットには信ぴょう性が不確かな情報が混じっていることを考えると、検索結果の内容を常に正しいかのように扱うのは問題がある。

しかも、グーグル自身も、疑問の余地のあるコンテンツの増加に手を貸している側面がある。子会社のユーチューブはいつでも奇妙で不思議な陰謀論(人類の月面着陸はでっち上げだったなど )の宝庫だ。先週のバズフィードの記事では、YouTubeにはサンディ・フック小学校銃撃事件で死者は出ていない(2012年に26人が殺された事件)とか、ミシェル・オバマ夫人は実は男性といった「右翼思想の拡散」や「歴史修正主義」を目的とした動画が増えているという。

ねつ造ニュースについて、フェイスブックに向けられた批判、特に一般国民多くの偽記事に晒されると何が真実かわからなくなり、部分的に内容を信じる可能性があるとの批判は、YouTubeにも同じように向けるべきだろう。米国の非営利ラジオネットワークNPRが先週末に繰り返し訴えたとおり、 YouTubeでは、次に視聴する推薦動画をアルゴリズムが決定するため、ひとつでも真偽が不確かな動画を見ると、同様の動画を次から次に見てしまう可能性がある。気が付けば、ミシェル・オバマ夫人の性別を疑うようになっていた、ということになりかねないのだ。

とはいえ、コンテンツを除去すれば済む問題ではない。意見とデマの間の境界線は微妙だし、表現の自由を抑圧するような検閲は、明らかに容認できない。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOはこの点を厳格に理解しており、ねつ造ニュース問題は「技術的にも哲学的にも複雑だ」と述べた

現時点では、フェイスブックの対応は(期待通りとはいえないにしても)投稿内容にフラグを立てることで、ユーザーは自身の健全な判断力を働かせられるし、フェイスブックは、フィードから問題のある投稿をすべて削除すべきか悩まなくて済むため、最初の一歩としては合格といってよいだろう。

しかし場合によっては、とくに強調スニペットについて、グーグルはアルゴリズムによって収集されたコンテンツであり、第三者に検証された内容ではないとは扱わず、客観的な事実であるかのように表示している。したがって、結果的には内容を真実と信じてしまう可能性が高まる危険性があり、ユーザーもグーグルも、何らかの対策をするべきなのだ。

(関連記事:Outline, Buzzfeed, Gizmodo, NPR, “Facebookのねつ造ニュース問題は、真偽判定のアウトソーシングで済むのか?,” “Siriとアレクサを倒す グーグルの強みは検索,” “フェイスブック、保守派への配慮でねつ造ニュースの選別を自粛?”)