未来の仕事:メタバース弁護士はバーチャル物件オーナー
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Job title of the future: metaverse lawyer 未来の仕事:メタバース弁護士はバーチャル物件オーナー

メタバース空間で活動する弁護士は、バーチャル物件を複数保有する大家でもある。 by Amanda Smith2023.06.30

ソムニウム・スペース(Somnium Space)の区画番号651には、トロントを拠点とするザネス法律事務所(Zannes Law)が入っている。この7階建てのメタバース・オフィスでは、主任弁護士のマダリン・ザネスがクライアントと個人的な相談をしたり、法律的な質問を抱えてやってきた人たちと会ったり、会議を開いたり、ゲスト講演をしたりしている。ザネス弁護士はこのメタバース内のオフィスにより、より没入感が高く、想像力にあふれたクライアント体験が可能になると話している。

ザネス弁護士はカスタム・メタバース・ビルダーを雇い、休憩室、プレゼンテーションステージ、レンタルオフィス、アートギャラリー、屋上のバーなどを備えたスペースを、ゼロから作り上げた。

ソムニウム・スペースのオフィスはザネス法律事務所にとって初のメタバースのオフィスだったが、同事務所は現在、別のプラットフォームであるスペーシャル(Spatial)版のニューカレドニアなどに複数のメタバース物件を所有する。

実際のマダリン・ザネス弁護士(本人提供)

必要な資格: 基本的には資格は何も必要ない。メタバースは実際の管轄区域ではないためだ。「メタバース法」のような法律も存在しない。少なくとも現時点では、弁護士が免許を取得できる分野ではないのだ。しかし、法学の学位を持っている人なら、目立つことは可能だろう。「最も重要なのは、オープンマインドを持つことです」とザネス弁護士は言う。

現在の課題: 法律はテクノロジーほど急速に進歩しないため、弁護士の活動は弁護士資格で定めれた管轄地域に限定されている。同時に、いかなる認証も受けずにバーチャル空間で法律サービスを提供しようとする「悪意ある者」も存在するとザネス弁護士は語る。また中には、クライアントから自身の身元を隠そうとする者もいる。

この問題に対処するため、ザネス弁護士とチームは今年、国際的なメタバース弁護士協会(Metaverse Bar Association)を設立した。この協会は、Web3で働く認定資格のある弁護士の登録簿を提供することを目的としている。

この仕事のメリット: 2Dのズーム(Zoom)での会話とは対照的に、リモートではありながらもクライアントとより楽しく、より魅力的な方法で関わることができる。「建物の中を歩きながらミーティングができます。NFTギャラリー、屋上のバー、私のオフィスでチャットをすることもできます。共通点を見つけ、一緒に充実した時間を過ごす方法は他にもたくさんあります」 。

メインオフィスには「クォンタム・リープ」と呼ばれるエリアがあり、ここではクライアントがザネス弁護士のメタバース物件のポートフォリオを確認し、探索できる。またザネス弁護士はクライアントにプライベート・リンクを提供し、いつでも好きなときにメタバースで遊んだり、スペースを利用したりできるようにしている。

商業的な展望:ザネス弁護士によると、メタバース内の「サテライト・オフィス」は、法律事務所にとって素晴らしい宣伝となっているという。またザネス弁護士はメタバースに不動産を所有することで、実際の大家と同じように、スペースを貸すことで金銭的な利益を得ている。