初のラボ培養、つまり実験室で作られた食肉が米国での販売承認を受けた。
カリフォルニア州に本社を置くアップサイド・フーズ(Upside Foods)とイート・ジャスト(Eat Just)の両社は、米国農務省(USDA)から6月21日に検査合格の通知を受けた。これは、各企業が米国で商業生産と販売を開始するために必要な最終承認だ。
畜産業は人間による世界の温室効果ガス排出量のほぼ15%を占める。排出量削減の可能性のある代替品を市場に投入しようと取り組む企業が増えている。
現在市場に出回っている代替肉のほとんどは植物を使って作られたものだ。アップサイド・フーズやイート・ジャストなどの培養肉会社は、代わりにバイオリアクターで培養された動物細胞を使って製品を製造する。生きた動物から組織サンプルを分離し、その細胞を研究室で増殖させる。これらの細胞が成長して増殖すれば食品に加工できる。
シンガポールは培養肉を承認した最初の国で、2020年にはイート・ジャストの培養肉部門であるグッド・ミート(Good Meat)に培養鶏肉の販売を許可した。イート・ジャストは2011年に設立され、卵の代替品を含む植物ベースの製品も製造している。
6月21日の一連の承認は、この種のものとしては米国初だ。
「アイデアが産業になるのを見るのは素晴らしいことです」。アップサイド・フーズの製品および規制担当副社長を務めるエリック・シュルツは言う。アップサイド・フーズは2015年にメンフィス・ミーツ(Memphis Meats)として設立され、それ以来技術開発を進め、規制当局の承認を得るために取り組んできた。
米国食品医薬品局(FDA)と米国農務省はいずれも米国の食肉規制について権限を持っている。2022年11月、アップサイド・フーズはFDAから食品に関する最終承認となる「質問なしの書簡」を受け取った。イート・ジャストは2023年3月にFDAの承認を受けた。
6月に農務省は両社のラベルを承認し、これにより両社は「細胞培養チキン」という名称で製品を販売できるようになった。21日のゴーサインは検査の合格通知で、これにより両社は生産施設の稼働を開始できる。これらすべての承認を得て、アップサイド・フーズとイート・ジャストは製品を製造して一般向けに販売できるようになったわけだ。
米国の規制当局から承認を得ることは業界にとって大きな節目だと、アップサイド・フーズに投資した最初のベンチャーキャピタル、SOSVのゼネラルパートナーであるポー・ブロンソンは言う。「食品が安全であることを確認するのは非常に重要です。それは絶対に必要であり、それがなければ将来の産業は存在しないでしょう」。
両社はまずレストランへの販売を開始し、その後小売り販売に移行する予定だ。イート・ジャストの培養鶏肉は、最初にワシントンD.C. の非公開レストランで販売される。シュルツ副社長によれば、カリフォルニア州の試験施設で生産しているアップサイドの製品は夏の終わりまでにサンフランシスコのレストラン、バー・クレン(Bar Crenn)で入手できるようになるはずだ。
「信じられないほど歴史的な瞬間です。次の大きなハードルは規模拡大です。率直に言って、それこそが重要なのです」(シュルツ副社長)。