海洋によるCO2除去に注目、メタの元CTOが5000万ドルの新計画
メタの元最高技術責任者(CTO)であるマイク・シュローファーは、地球温暖化問題の対策として、海洋アルカリ度向上に関する研究を加速させるための非営利団体を発足した。 by James Temple2023.06.15
メタの元最高技術責任者(CTO)であるマイク・シュローファーが設立した非営利団体が、海洋アルカリ度向上に関する研究を加速するための新組織を発足した。海洋アルカリ度の向上は、海を利用して二酸化炭素をさらに吸収・貯蔵できるかもしれない手段の一つだ。
シュローファーが共同設立したアディショナル・ベンチャーズ(Additional Ventures)と他の複数の財団は、「カーボン・トゥ・シー・イニシアチブ(Carbon to Sea Initiative)」と名付けられた非営利研究プログラムに5年間で5000万ドルを拠出することを誓約した。同イニシアチブは、可能性を秘めているアプローチを評価すること、いずれは海洋で小規模な実地試験をすること、それらの実験の許可が円滑になり、研究により多くの公的資金が提供されるような政策を推進すること、そして、海洋アルカリ度向上の試みがうまく安全に機能することが証明された場合に、それらを実行・評価するためのテクノロジーを開発することなどを目標としている。
海はすでに気候変動による最悪の危機に対する強力な緩衝材として機能しており、人間による二酸化炭素排出量の約4分の1を吸収し、地球温暖化の大部分を緩和している。二酸化炭素は、空気と海が接する海面で、海水中に自然に溶け込むのだ。
しかし、科学者たちや複数のスタートアップ企業は、気候変動を緩和するため、海洋でさらに多くのことができないかと可能性を探っている。現在、多くの研究が進んでおり、温暖化を抑制するためには各国が排出量を削減し、さらに大量の温室効果ガスを大気から取り除く必要があることが分かっている。
海洋アルカリ度向上とは、海水にカンラン石、玄武岩、石灰などのアルカリ性物質を添加するさまざまな方法を指す。これらの基礎物質は、水中の溶存無機炭素と結合し、重炭酸塩や炭酸塩という、海中で数万年も存在し続けることのできるイオンを生成する。そうしてCO2が失われた水が海面に到達すると、大気中の二酸化炭素をさらに吸収し、平衡状態に戻ることができる。
これらのアルカリ性物質は、粉砕して船舶から直接海水に添加したり、海岸線に設置したり、海水との反応を誘発する陸上装置で使用したりできるだろう。
カーボン・トゥ・シー・イニシアチブは、アディショナル・ベンチャーズがアステラ・インスティチュート(Astera Institute)やグランサム・エンバイロメンタル・トラスト(Grantham Environmental Trust)などとともに2021年後半に立ち上げた海洋アルカリ度向上研究開発プログラム(Ocean Alkalinity Enhancement R&D Program)を事実上拡張するものだ。海洋による気候問題解決の推進に取り組む非営利研究グループのオーシャン・ビジョンズ(Ocean Visions)も、資金は提供していないがパートナーとなっている。2022年初めには、これらの組織により、今後5年間で使用できる「少なくとも1000万ドル」の研究助成金の申請受付が開始された。同プログラムは、この研究分野にこれまで2300万ドルを投入している。
カーボン・トゥ・シーの理事長を務める予定のシュローファーは、綿密な研究が必要とされる二酸化炭素除去への有望なアプローチであると常々耳にしていたため、海洋アルカリ度向上の分野に支援することを決めたという。だが、「その試みへ実際に資金を提供するために行動する人は、誰一人いませんでした」と語る。
「物事を始めるためには、行動しなければなりません」とシュローファーは言う。「特に、科学を前進させ、これらの基本的な疑問に答えられる人々が、答えを出すためのリソースと時間を十分に確保できるようにすることが重要です」。
以前にアディショナル・ベンチャーズで海洋二酸化炭素除去のプログラムディレクターを務めていたアントニウス・ガガーンが、この新組織を率いることになる。
「CO2を永続的に除去するため、海洋は既に天然炭素のポンプを使っているということをさまざまな方法で観測しました。その結果、複数の理由から海洋アルカリ度向上が私たちにとって最も有望な方法だということが分かってきました」とガガーンは言う。
この方法は、「非常に拡張性があり」、「とても永続的」で、他の海洋によるアプローチのように生態系を「台無しにすることはない」とガガーンは付け加える。
「気候への大 …
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