地震の被害は甚大だ。毎年約1万人が地震とその二次災害によって命を落としているが、犠牲者数はもっと多い場合もある。2004年にスマトラ島沖で発生したマグニチュード9の地震による津波では23万人以上が亡くなり、2010年にハイチ国内を襲ったマグニチュード7の地震では20万人が死亡、1556年に中国で起きた地震では80万人以上が亡くなったと考えられている。
したがって地震を予測できる優れた方法があれば、どんな方法でも非常に有益だ。
ケンブリッジ大学窒素ガリウム研究センター(英国)のバートランド・ルエト=ルデュク研究員と米ロスアラモス国立研究所(ニューメキシコ州)の研究チームが驚くべき発見をした。研究チームは、実験用の地震が起きる兆候を、ひずみが発する音だけで予測するよう、機械学習アルゴリズムを訓練したのだ。研究チームは、新手法で実際の地震を予測できるかどうかには慎重だが、研究成果は地震研究に新たな道を切り開くだろう。
まず、背景知識を紹介しておこう。地質学者は、地震のおおよその発生時期であれば以前から予測できた。断層が以前にいつ動いたかを計測し、地震の周期性から未来を予測するのだ。
もっとも有名な例は、サン・アンドレアス断層(カリフォルニア州の)の一部であるパークフィールド断層(地球上で最も詳細に研究されている断層のひとつ)だ。パークフィールドでは1857年、1881年、1901年、1922年、1934年、1966年に地震が発生しており、数年の誤差があるとはいえ22年ごとの周期性がある。このとおりであれば、1988年から1993年に地震が起きる可能性があると地震学者が予測していたが、実際に発生したのは2004年だった。
世界でもっとも詳細に観測されている断層でこの程度の精度なのだから、他のほとんどの場所では地震の予測精度に限界がある。
数十年単位での地震予測でも、地震が起きやすい地域の建築基準を遵守させる目的には十分だ。しかし、地震発生から命を守る目的ではほとんど役に立たない。地震発生を数日単位で予測するには、動物が地震の兆候をなぜ …