G7でも議論されたAI規制、世界の主要な6つの取り組み
チャットGPTなどの強力な生成AIの登場に伴い、AIの利用や開発に関するルールづくりの議論が加速している。AI規制に関する世界の主要な取り組みを6つ、紹介しよう。 by Melissa Heikkilä2023.05.24
オープンAIのチャットボット「チャットGPT(ChatGPT)」の成功によって、強力な人工知能(AI)ツールの可能性が、驚きと懸念を持って注目される中、 AI規制の議論が盛り上がりを見せている。生成AI(ジェネレーティブAI)は、生産性向上ツールやクリエイティブ・アシスタントに大きな変革をもたらす可能性がある一方、社会に害をもたらす可能性も指摘されている。誤情報の生成に使われており、スパムや詐欺のツールとして武器化されるおそれもあるからだ。
テック企業のCEOから米国の上院議員、主要7カ国(G7)の首脳らまで、ここ数週間、AI技術の国際基準とガードレールの強化を求める声が上がっている。幸いなことに、すでにさまざまなAI規制の取り組みがあり、政策立案者はゼロから始める必要はない。
MITテクノロジーレビューは6つの国際的なAI規制の試みを分析し、それぞれの長所と短所を端的に明らかにするとともに、影響力の度合いを示す大まかな点数(5点満点)をつけた。
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法的拘束力のあるAI条約
46カ国が加盟する国際機関である欧州評議会は、法的拘束力のあるAI条約の策定に向け、最終調整を進めている。AI条約は、署名国に対し、AIが基本的人権、民主主義、法の支配を守る形で設計、開発、適用されることを保証するための措置をとるよう求めるものだ。条約には、顔認識など基本的人権を危険にさらす技術のモラトリアム(一時停止)が含まれる可能性がある。
欧州評議会のアドバイザーを務めるルーヴェン・カトリック大学法学部の法学者で哲学者のナタリー・スムハによると、すべてが計画通りに進めば、同評議会は11月までに条約の起草を終えることができるという。
長所:欧州評議会は、英国やウクライナなど多くの非欧州連合(EU)諸国を含んでおり、米国、カナダ、イスラエル、メキシコ、日本などを交渉の場に招待している。「これは強力なシグナルになります」とスムハは話す。
短所:各国が個別に条約を批准し、国内法に反映させる必要があり、それには何年もかかる可能性がある。また、厳しい規則やモラトリアムなど、各国が気に入らない要素を排除できる可能性もある。交渉チームは、保護を強化することと、できるだけ多くの国に署名してもらうことのバランスを取ろうとしている、とスムハは言う。
影響力の評価:3/5
OECDのAI原則
2019年、経済協力開発機構(OECD)の加盟国は、AI開発の基盤となるべきいくつかの価値観を定めた拘束力のない原則を採択することに合意した。この原則では、AIシステムは透明性があり説明可能であること、堅牢で安全な方法で機能すること、説明責任の仕組みが整備されていること、法の支配・基本的人権・民主的価値・多様性を尊重する方法で設計されることが求められている。また、AIは経済成長に寄与すべきものであるとしている。
長所:これらの原則は、欧米のAI政策の憲法のような役割を果たしており、合意以来、世界中のAI政策の …
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