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高級リゾートに集う、長寿国家の創設を熱望する人たち
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I just met the founders of a would-be longevity state

高級リゾートに集う、長寿国家の創設を熱望する人たち

モンテネグロの高級リゾート地で、長寿を追及する人たちが集まる長期イベントが開催された。数日間だけ現地で参加した記者の感想をお届けする。 by Jessica Hamzelou2023.06.22

この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。

死は道徳的に悪いことだと考え、老化を遅らせる、または逆行させる方法を発見する道徳的義務があると考える人たちのグループが存在すると言ったら、皆さんはどう思うだろうか? バイオハックや自己実験なども奨励して、長寿薬の開発を急がせる独自の法律が定められた新たな国家を建国しようとしているのは、一体どのような人たちだろうか?

そのような考えを持つ人たちのコミュニティが、約2カ月にわたってモンテネグロのリゾートで共同生活を続けている。彼らは、アイデアを共有し、プロジェクトに一緒に取り組み、ハッカソンを催し、たくさんのパーティーを開催するこの集まりを「ズザル(Zuzalu)」と呼んでいる。5月初旬、私は自分の目で確かめに行ってきた

ズザルまでの旅は容易ではなかった。空港に向かう午前3時発の列車はキャンセルになり、飛行機は到着が遅れたうえ、天候が悪すぎてモンテネグロに着陸できなかったため、隣国のクロアチアに目的地が変更された。アドリア海沿岸のリゾート地にあるこの「ポップアップシティ・コミュニティ」で、私が泊まることになっていた部屋にたどり着くまで、タクシー、ボート、ゴルフバギーを乗り継がなければならなかった。

ズザルの発案者は、暗号通貨イーサリアムを作ったヴィタリック・ブテリンである。しかし、イベントの共催者は、共同の取り組みであると強調する。主催者の1人で、ブロックチェーン・プラットフォームのギットコイン(Gitcoin)で働くジャニーン・レジェは、ズザルをヒエラルキーがほとんどない非中央集権型コミュニティにすることを主催チームは望んでいるという。

レジェが私に話したことによると、ズザルにはステータス指向でない人だけが招待されているという。馴染めなかった人や他の参加者に迷惑をかけた人は送り返された。「入場のハードルはとても高く、退場のハードルはとても低くなっています」と言う。話をするうちに、レジェは私の存在をあまり好ましく思っていないことが分かった。このイベントのハイライトは何かと尋ねると、彼女はメディアで取り上げられなかったことだと答えた。ズザルは、ステータスを求めるものではないとされているにもかかわらず、非常に排他的なイベントであるという印象を受けた。

この場所自体は、およそ10年前にゼロから建設された高級リゾートだ。つい最近まで荒れ果てた海岸線だった約700万平方キロの土地は大部分が急勾配の丘であり、今では約10億ユーロ相当のマンションとホテルが建てられている。

すべてが信じられないほど清潔で、とても高級感があった。滞在中、ゴミも虫も一切目にすることがなかった。このリゾートは、まさに富裕層向けに設計されているように感じられた。ズザルの参加者はワッツアップ(Whatsapp)を使って、リゾートの従業員が運転する無料ゴルフバギーを呼んで動き回れる。

私は数日間ズザルを訪れただけだったが、参加者は2カ月間の滞在予定となっている。イベントは、合成生物学から公共財まで、毎週異なるテーマが設定されている。私は、長寿バイオテック・カンファレンスに合わせて訪れた。

ズザルでは、決められたドレスコードは存在しない。スーツを着て歩いている人もいれば、ショートパンツにビーチサンダルを履いている人もいた。しかし、ロゴ、企業名、スローガンがあしらわれた服を着ている人がたくさんいた。どこに行っても、帽子、バッグ、トップス、ノートPCに「Longevity(長寿)」のステッカーが貼られているのを目にした。 さらに、「Molecule(分子)」「Say forever(永遠が合言葉)」「I sequenced and analyzed my genome. What about you?(私はゲノム配列の解読・分析をした。あなたは?)」などと書かれたTシャツを着ている人たちも見かけた。

長寿バイオテック・カンファレンス自体は、サイケデリックファージ実験室で培養された生殖細胞の展望、細胞を部分的に再プログラミングしてより若い状態にする可能性についての講演が目玉となっていた。イベントには実にさまざまな人たちが集まり、暗号通貨コミュニティやWeb3コミュニティだけでなく、健康長寿に全力を尽くす人たちも集まった。あるセッションで講演者が、どういった人たちが集まっているのかと聴衆に尋ねると、3分の1は起業家だと答え、19%は投資家だと言った。出身地を尋ねると、ロシアという答えが最も多かった。

聴衆は最終的な目標についても尋ねられた。答えは切実なものから気味悪いものまで多岐にわたり、その中には「父と母を救うこと」や「女性を若々しく美しく保つこと」というものがあった。「ユニコーンを作る」という目標の人もいたが、もちろん「永遠に生きたい」という人も少なくとも1人はいた。

いくつかのセッションでは、長寿を重視した新たな国家がどのようなものになるかという議論に専念した。参加者の中には、志を同じくする人たちが、効果は立証されていないものの、より長く健康に生きる手助けになると信じている療法を、自由に自己実験できる主権国家の建国を望んでいる人たちがいた。長寿のための療法や器具の開発を妨げていると考えられる規制を撤廃したいと考えている人もおり、現在の医薬品の承認プロセスは遅すぎると主張した。

ズザルの主催者は、このイベントは実験であり、将来的に同様のイベントを開催する予定があると語った。参加者の1人は、ズザルは宗教のようなものだと言った。ズザルが人生を一変させたと語った参加者も複数いた。

私としては、別世界を垣間見せてくれたズザルは、興味深いものであった(このイベントに関する詳しい記事はこちらから)。

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生物医学と生物工学を担当する上級記者。MITテクノロジーレビュー入社以前は、ニューサイエンティスト(New Scientist)誌で健康・医療科学担当記者を務めた。
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