ナイアンティック「たまごっち風」AR、ポケモンGOの再来なるか
コネクティビティ

A first look at Peridot, the new AR game from the creators of Pokémon Go ナイアンティック「たまごっち風」AR、ポケモンGOの再来なるか

ポケモンGOで一世を風靡したナイアンティックが、新作ARゲーム「ペリドット」の配信を開始した。「たまごっち」を現代風にアレンジしたというゲームは、ポケモンGOに続くヒット作になるか。 by Tanya Basu2023.05.24

ペットのオルゾは、私が数メートル先に投げたテニスボールを息を切らしながらうれしそうに持ってきた。オルゾは目を輝かせ、尻尾を振った。「よくやった、相棒!」と私は甘い言葉をかけた。オルゾはお腹を撫でて欲しそうにしていたので、私はそれに応えた。

オルゾは本物のペットではない。「ポケモンGO」の開発元であるナイアンティック(Niantic)が、5月9日からアプリストアで配信を開始した新しいモバイルAR(拡張現実)ゲーム「ペリドット(Peridot)」に登場するバーチャル生物だ。プレイヤーがアニメチックなキャラクター「ドット」を育てていくことが、このゲームのコンセプトとなっている。

ペリドットは、1990年代に一世を風靡したバーチャル・ペット「たまごっち」に大きな影響を受けている。ペリドットのプロダクト・ディレクターであるジア・フォーゲルは、5月3日に実施されたプレス向け説明会で、「ペリドットは、初代たまごっちを現代風にアレンジしたものです」と述べた。

それは、本作の的確な説明といえる。アプリを通して周囲を見ると、バーチャル・ペットが走ったり隠れたり、現実世界の障害物をよけたりする様子を見ることができる。ペットは十分にかわいらしく、ペットを飼いたい動物好きとしては、実際にペットを飼っているような、ほんわかした気持ちを味わうことができた。しかし、ゲームプレイはやや繰り返しが多く、スマホのバッテリーを信じられないほど早く消耗してしまうことがわかった。

大きな焦点は、プレイヤーが報酬を得るために夢中になってキャラクターを追いかけ、社会現象となった大ヒットゲーム「ポケモンGO」の成功をナイアンティックが再現できるかどうかだ。ナイアンティックは2016年にリリースしたポケモンGO以降も、ハリー・ポッター、カタン、トランスフォーマーなど、他社作品のライセンスを使ったゲームを発表してきた。自社オリジナルのゲームは、2014年に同社が初めて開発したARゲーム「イングレス」以来となる。本作には多くの期待がかかっているのだ。

ペリドットで、ナイアンティックは他社作品のキャラクターから離れ、新しいキャラクターでまったく新しい世界を作り出そうとしている。同社によれば、すべてのドットは、同社独自のアルゴリズムを使用し、実在の生き物(たとえばチーター)、伝説の生き物(イエティ)、想像上の生き物(ユニコーン)をマッシュアップして作成されたユニークなものだという。また、肌の質感や羽毛のような物理的な属性もアルゴリズムによって変化する。ドット同士で繁殖させると、アルゴリズムで導き出された両親の遺伝子が組み合わさった、まったく新しい生物が「孵化」する。

フォーゲルによると、このアルゴリズムにより、全く同じドットはひとつとして存在しないという。「組み合わせは2.3×1024通りあり、宇宙の星の数や地球の砂粒の数を上回っています」。

たまごっちと同じように、このゲームも卵から始まる。花こう岩の卵を選ぶと、殻が割れて、アニメ風の大きな目をした、丸くてふわふわした銀色の動物が生まれた。バーチャルペットにオルゾという名前をつけることにしたのは、プレイする直前に食料品の買い物リストを作ったからだろう(オルゾは、パスタの一種だ)。薄暗いオフィスの中で、オルゾは壁から壁へ跳び移ったり、カーペットの下をあさっておやつを見つけたり、アイフォーンの画面上でお腹をこすって「撫で」てやると、私の隣に寄り添ってクンクン鳴いたりした。

私のドットは家の中で「生まれた」が、このバーチャル生物は家にいることを想定されているわけではない。ナイアンティックは、ペリドットをポケモンGOのようなアウトドアゲームと位置づけている。「日々の活動のきっかけを提供したいと考えています」とフォーゲルは話す。

ペリドットは、アプリ使用中に歩いた歩数や移動した距離の達成度に応じたリワード(報酬)をプレイヤーに提供することで、それを実現している。また、ドットと一緒に食べ物やトロフィーを探しに行ける公園など、近場のスポットも提案する。

ナイアンティックの新作ARゲーム「ペリドット」の3枚のスクリーンショット、筆者のキャラクター「オルゾ」が自宅の庭で遊んでいる様子。
Niantic

そこで、翌日、裏庭でオルゾを走らせてみた。「とってこい」遊びをしたり、「エサ探し」をトライしたりした。 スマホで円を描くと、オルゾはARで生成された空間の中を探し、時にはサンドイッチのような食べ物を見つけ出した。オルゾは葉の中に走って入ったり、水たまりの上に座ったり、柱を避けたりと、スマホを通して見る世界と違和感なく一体化し、ペリドットのARリアルタイムマッピング能力が発揮されていた。しかし、不思議なことに、ARは私の靴を感知することができず、オルゾは幽霊のように靴の中に溶け込み、没入感のあるイリュージョンを壊してしまった。

ペリドットは、ポケモンGOを含むこれまでの他のゲームと同様に、プレイヤーにゲーム内の課金アイテム(ペットのアクセサリーやおやつ、追加のドットなど)を購入してもらうことで収益を上げることを目指している。アイテムの価格は、ベータ版では2.99ドル~99.99ドルだ。ナイアンティックは、アプリ内ショッピング体験を提供するアマゾンとの提携により、物理的な商品を販売することで、ゲーム外でも収益を上げたい考えだ。

ナイアンティックは、ポケモンGOの追いかけて捕獲する仕組みではなく、ほのぼの感に重点を置き、ペリドットの差別化を図ろうとしている。「どうぶつの森」や「スターデューバレー」のような「ほのぼの系」ビデオゲームは、コロナ禍において、暴力や競争よりも動物や農場全体を育てることに重点を置くことで、人気を博した。繰り返されるアクションは、ジョイスティックの操作スキルよりも一貫性を重んじるもので、癒しや安らぎを与えてくれるものだ。

技術的には、ペリドットはかなりスムーズにプレイできる。リアルタイムマッピングは、多少の不具合はあるものの、ほぼ問題なく動作する。ただし、スマホARは、バッテリーの消耗が激しい。オルゾと15分遊んだ後、フル充電したアイフォーンXのバッテリー残量は15%になった。

フォーゲルは、ベータテストではバッテリーの消耗が問題になったことを認め、アイフォーン8以上のモデルやここ数年以内に発売されたアンドロイド端末などの「ハイエンド端末」でペリドットをプレイすることをナイアンティックは推奨していると述べた。フォーゲルは、バッテリーを節約するためにプレイ時間を短いセッションに制限するか、バックグラウンドでアプリを実行して歩数をカウントすることを提案した。「ARを常時起動させると、端末に負担がかかり、デバイスが熱くなります。短時間のゲームプレイを推奨します」とフォーゲルは述べた。

ドイツのイルメナウ工科大学でバーチャル世界デジタルゲームラボを率いるウルフガング・ブロールは、ペリドットが依然としてスマートフォンの画面に制限されているという事実が課題になると考えている。ARゲームが普及するには、やはりARグラスが必要だとブロールは話す(ナイアンティックは、ARグラスが利用可能になれば、ペリドットをリマスターすると述べている)。

その通りかもしれない。ただ、これを書いている現時点でペリドットを48時間プレイした私は、すでに飽きてしまった。子どもや初めてARを使う人であれば、もっと長くプレイできたかもしれない。オルゾはかわいく、物体の周りを駆け回る能力に驚かされたが、ペリドットがARゲームの分野に変化をもたらすには、愛らしい動物や相当な技術的スキル以上のものが必要なのかもしれない。