謎の多いカナダのスタートアップ企業キンドレッドAI(Kindred AI)は、VRゴーグルを装着してモーション・トラッキング・コントローラー(動き追跡コントローラー)を持つ人間のパイロットとロボットをペアリングし、超人的なスピードで難しい作業をこなせるロボットを開発している。キンドレッドは先週、ハードウェアをMIT Technology Review編集部に実演し、今後数カ月以内に、製品を市販する計画だという。
ロボットや人工知能のせいで仕事がなくなることを懸念する声はあるが、機械にはまだできないことがたくさんある。だが、キンドレッドAIのテクノロジーは、人間が機械と協調して働く、近未来の風景を垣間見るようだ。しかも人間の能力を導入して自動化システムの機能を強化する可能性まで示している。キンドレッドの長期目標はロボットの販売にとどまらず、現段階の人間援助型学習を応用し、まったく新しい、さらに強力な人工知能を開発することだ。
キンドレッドを創業したのは、量子コンピューティング企業D-Wave(本社カナダ・バーナビー)の関係者数人だ。キンドレッドは現在、従来型の工業用ロボットアームで、小さな衣料品など、人間が扱いにくい物体をつかんだり、置いたりする実験を続けており、今よりも素早く、ミスが少なく作業できるようにしようとしている。ロボットアームは作業方法がわからなくなると人間に助けを求めてくる。人間はVRヘッドセットを装着し、作業できなかった動作を確認し、パイロットとして一時的にアームを操作してやり方を教える。
キンドレッドの共同創業者のひとり、ジョーディー・ローズ最高経営責任者(CEO)は「パイロットは、ロボットが見たり、聞いたり、感じたりすることを把握できるのです。パイロットが操作すると、ロボットはその通りに動きます」という。ローズCEO(D-Waveの創業者のひとりで、現在も同社でCTOを務めている)は「VRによって、弊社はロボットに人間らしい動きを訓練できます。ロボットを制御して特定の場所に正確にモノを素早く置くなど、人間は全ての点で最も速く優秀なわけではありません。しかし、判断が難しく、予期しない出来事を解決する点では、人間がいまだに一番優れています」という。
キンドレッドのシステムは複数の機械学習アルゴリズムを採用しており、そのうちのひとつが、アイテムをつかむといった、望ましい結果を出せ …