米国環境保護庁(EPA)が、大規模な刷新に向けて準備を進めているようだ。
2月27日、ドナルド・トランプ大統領は政権初の国家予算の概略を示し、国家安全保障の強化のため、国防予算を540億ドル増額することを盛り込んだ(詳細不明)と述べた。もちろん、増額分は他の政府機関の予算を回すことになる。ホワイトハウスが示唆しているように、もっとも打撃を受けるのはEPAになりそうだ。
影響はかなり大きいだろう。EPAは「大規模な予算の移行により、特に気候変動関連政策の予算が削減」される見込みだ、と当局者がアクシオス(Axios)に語った。現在、EPAの予算は83億ドルで、1万5000人の職員がいる。だが、トランプの政権移行チームを率いるミーロン・エベルの分析では、新政権はEPAの職員数を5000人にまで削減してもよいと見積もっている。
EPAの職員が関わる環境保護規制が減るのは明白だ。先週末、EPAのスコット・プルイット長官は、EPAの従来の政策の多くを「徹底的に撤廃していく」と述べた。プルイット長官は特に、クリーン・パワー・プランとメタンガス排出基準、水質規制の廃止に言及した。MIT Technology Reviewのジェームス・テンプルの記事にあるとおり、EPA関連の政策を劇的に転換すれば、パリ環境協定で米国に求められる削減目標は、まったく達成できなくなる。
トランプ政権のポピュリズム的性格と矛盾するのは、環境予算の削減が世論を反映していない事実だ。約1カ月前にシンクタンクのピュー研究所が発表した報告書によれば、米国人の65%は再生可能エネルギーの優先を支持する一方、化石燃料の使用拡大を支持したのは27 %だけだったのだ。
トランプ政権は今後数週間で予算を詰め、来月には議会への提出準備が整うと見込まれる。予算教書は、承認に向けて議会で詳細に議論される(米国の制度では、連邦政府の予算を編成するのは連邦議会で、大統領には議会に方針を示すことしかできないため「予算案(budget bill)」ではなく「予算教書(Budget Message of the President)」と呼ぶ)。だが、トランプ政権の方針どおりにことが進めば、一般の米国人が何を考えているかに関わらず、EPAの従来の政策は見る影もなくなるだろう。
(関連記事:New York Times, Scientific American, “トランプ政権、エネルギー政策で世論無視,” “How Much Damage Could Scott Pruitt Really Do at EPA?”)