人工衛星149基を運用 プラネット・ラボの全地球画像ビジネス
人工衛星88基を一度に打ち上げ、合計149基の人工衛星を保有するプラネット・ラボは、地球の全表面の画像を毎日更新しようとしている。グーグルの衛星事業も買収済みで、1ピクセルあたり約1~3mの解像度の画像を企業や研究者が購入できるようになる。 by Nick Romeo2017.03.01
地球画像の観測事業を展開するスタートアップ企業のプラネット・ラボは、2月初め、インドの宇宙機関が小型人工衛星88基を軌道に乗せたことで、人工衛星を一度に打ち上げた世界記録達成に貢献した。
たくさんの人工衛星を打ち上げたことで、プラネット・ラボは民間事業者で史上最多の合計149基の人工衛星を軌道上に保有することになり、自社も世界記録を達成した。
プラネット・ラボのマイク・サフィアン・ディレクター(発射・渉外担当)は、衛星の数が増えたことで、今後3カ月以内に地球の表面全体の写真を毎日撮影するという(他社の前例はない)同社の主要目標を達成できるだろうと予想している。すでにプラネット・ラボでは、地球の表面のうち約5000万平方km(北米大陸全体の2倍の広さ、地球全体の表面積は約5億1000万平方km)を毎日撮影している。
人工衛星の費用を抑え、サイズを縮小する(衛星1基はバックパック1個とほぼ同じ大きさで、重さは約4Kg)ことで、プラネット・ラボと同業数社は、多数の衛星を打ち上げ、維持することの経済性を変えてきた。
スタンフォード大学宇宙ランデブー研究所の創設者でもある同大のシモーネ・ダミコ助教授(航空宇宙学)は「米国航空宇宙局(NASA)のような機関とは対照的に、プラネット・ラボは非常に活発で、頻繁に衛星を打ち上げて品質を改良しています。画像の解像度はまずまずですが、撮影範囲は素晴らしいです」という。
現時点のプラネット・ラボの取引先は、さまざまな企業や政府、世界100カ国以上の非営利団体で、業種としては農業から顧客と地理情報を結びつけるマーケティング会社、災害救助機関まで幅広い。プラネット・ラボは人工衛星から大量に送信される画像をソフトウェアで自動的にカテゴリー分けしており、簡単に検索できるため、さまざまな業界ごとのデータセットをすぐに構築できるのが特徴だ。
プラネット・ラボが提供する画像は、あらゆる場面で使われている。違法な採掘作業や港湾での船舶交通(国の経済的繁栄を測る代替的な指標になる)を監視したり、石油タンクの影の長さから最大容量を割り出して備蓄量を推定したり、ペルーやベトナム等、森林破壊率を監視している取引先もある。2015年4月に発生したネパールの地震では、プラネット・ラボの人工衛星が撮影した画像のおかげで、救急隊員は被災地域の地図では特定できなかった複数の村を発見できた。
現在、プラネット・ラボの人工衛星が撮影する画像の解像度は1ピクセルあたり約3mで、車や木を識別するには十分でも、人間は識別できない。ダミコ助教授によれば、プラネット・ラボはグーグルの衛星画像小会社テラ・ベラ(以前の事業名は「スカイボックス・イメージング」)を最近買収し、テラ・ベラの人工衛星に搭載されている大型レンズにより、解像度を1ピクセルあたり約1mまで高められるという。テラ・ベラの人工衛星を使えば、顧客や研究者は細部の観察のために画像を拡大する前に、低解像度の画像で、観察対象を見つけられる。約3mの解像度と、毎日更新される地球の表面全体の画像があれば、今まで以上に大量の最新データセットを構築できるだろう。
人工衛星は、同じ場所を飛び回っていつでも飛びかかる姿勢にある猛禽類に例えられることがある。しかし、プラネット・ラボのウィル・マーシャル共同創業者が率いる研究チームは、衛星がもたらすデータで進められる目標の平和的な側面や利他的な側面を表現しようと、人工衛星を「鳩」と呼ぶ。サフィアン・ディレクターは、森林保護や違法な採掘作業の防止、食品の安全性等の環境保護運動について、同社は引き続き深く関与していくという。
プラネット・ラボの画像解像度が高まると、プライバシーやセキュリティが心配だが、グーグルのストリートビューが普及し始めた頃と同じことがいえる。たとえば、携帯電話の基地局や原子力発電所、重要な遺跡等の所在地に関する正確なデータを公表すれば、セキュリティ上のリスクは明らかに高まるだろう。スタンフォード大学法学部インターネット・社会センターのアルバート・ジダリ・ディレクター(プライバシー担当)の予測では、プラネット・ラボは最終的に、画像のモザイク加工や消去に対する苦情や要求に対処する、きちんとした体制が必要になる。
プラネット・ラボ社内にはすでに倫理委員会があるが、サフィアン・ディレクターによると研究者が自社のデータのアクセス権を取得する手続きは「簡易的」で、データが転売されて悪用されないようにしていくつもりだという。
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