「慎重になるべきだ。最近のイノベーションブームは終わりに近づいている可能性が高く、テクノロジー分野の投資家はやり過ぎだ」
こう語るのは、シリコンバレーの投資家・起業家の エラド・ギル。
ツイッターとグーグルで重職を長年勤め、現在はエアー・ビー・アンド・ビー、スクエア、ストライプなどの非上場企業に投資したり助言したりしているギルは、次のテクノロジーの「大波」を探すにあたって、投資家が、成功にうぬぼれるソフトウェア企業にしか通用しないやり方で、伝統的に収益性が低く、装置産業的な(経済全体との関わり方も流通方式も異なる)業界を評価し始めたことをブログで次のように論じている。
「テクノロジー分野の投資家は、食品、機器、従来型のバイオテクノロジー、石油、ガスなど、土地勘のない業界にまで投資しています。この現象は、ソフトウェアが他の分野を侵食し変革させている証拠でしょうか。それとも無言の(そしておそらく自覚すらない)絶望なのでしょうか。ソフトで制御できたり、ネットワークにつながったり、クラウドファンディングで始まったスマート・トースターは、結局のところやっぱりトースターなんですよ」
- 39%
- 全投資額に占めるソフトウェア企業の割合(2016年第1四半期)
ただし、ソフトウェア産業以外の業界が、投資額でソフトウェア産業に追いつくまでには、しばらく時間がかかりそうなことは強調しておこう。2009年以降、ソフトウェア産業はその他のテクノロジーの投資額を上回っており、現在でもベンチャー投資家に圧倒的な人気だ。2016年の1~3月までに、投資家は資金の39パーセントをソフトウェア産業につぎ込んでいる。プライスウォーターハウスクーパースと全米ベンチャーキャピタル協会の調査データによると、2014、2015年と同水準の割合である。
とはいえこの数字には、ウーバーやスナップチャットなど、評価額が10億ドルを超える特定のユニコーン企業に投資家が驚くほど強力な継続的に支援していることも含まれる。
ソフトウェア産業以外に目を向けると、勝者と敗者が分かれる。バイオテクノロジー企業はベンチャーファンド資金の20%分18億ドルを2015年に獲得しており、2014年からほぼ2倍に増えた。一方、エネルギー分野の企業は、長い間投資家から無視されるかの扱いを受けており、わずかな分け前にしかあずかれていない。2016年1~3月にエネルギー分野の企業が受けた投資額は3900万ドルでファンド資金総額の2%に過ぎない。