筋ジストロフィーにより死の危機に瀕している少年たちを代表する財団が、DNAを編集する画期的手法「クリスパー (CRISPR)」 で病気を治療するつもりだ、と発表した。
筋ジストロフィー患者の慈善団体キュア・デュシェンヌ(本部カリフォルニア州ニューポート・ビーチ)は、新設のスタートアップ企業エクソニクス・セラピューティクスの科学者がハツカネズミの細胞のDNAを置き換えて筋ジストロフィーを治療した研究を踏まえ、同社に500万ドルの資金を提供する予定だという。
医師でエクソニクス・セラピューティクスのジャック・ノーウェル最高経営責任者 (CEO) は「弊社が求めているのはホームランです。DNAエラーそのものを修正するのです」と述べた。
エクソニクス・セラピューティクスは、できるかぎり早くデュシェンヌ型筋ジストロフィーを患っている少年に対するCRISPRの試験に進みたい、とノーウェルズCEOはいう。CRISPRテクノロジーは、DNAを正確に書き換える画期的かつ有力な方法だ。新生男児の約3500人に1人がデュシェンヌ型筋ジストロフィーを持つ状態で生まれており、病気に冒されている少年の筋肉にCRISPRで正しいDNAを投入することで、致命的状態を引き起こす遺伝的エラーを治療できる可能性がある。
エクソニクスの設立は、患者がCRISPRに病気治療への希望をどれだけ掛けているか、さらに一部の慈善団体が医薬品開発への直接資金提供(「ベンチャー慈善事業」と呼ばれる)をどう始めているかの実態を示す例でもある。治験には莫大な見返りがあり得る。2014年には、膵嚢胞性線維症財団が医薬品の開発支援に1億5000万ドルを投入し、その後、医薬品「カリデコ」の権利を33億ドルで売却した。
ノーウェルズCEOは、キュア・デュシェンヌによるエクソニクスへの500万ドルの出資が一企業による同社への過去最大の額になったのは、遺伝子編集による治療効果は、既存のデュシェンヌ型の治療薬よりはるかに改善しうるという自社の信念を反映している、としている。「CRISPRは、最小限の効果しかない …