MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.10刊行に寄せて
MITテクノロジーレビュー[日本版]は印刷版マガジン『Vol.10 世界を変えるU35歳イノベーター』を3月14日に発売した。今号の狙いと主な内容を紹介する。 by MIT Technology Review Japan2023.03.14
MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって続けている年次特集「35歳未満のイノベーター」の最新版をお届けする。
- この記事はマガジン「世界を変えるU35イノベーター2022年版」に収録されています。 マガジンの紹介
過去2年間のこの特集では、2020年に始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを受けて、公衆衛生や保健医療に関わるさまざまなイノベーターたちを取り上げてきた。大手製薬会社が異例のスピードで華々しい成果を上げていく裏側では、検査キットやワクチン、治療薬の開発に独自に取り組む研究者や起業家、それらの公平な分配に取り組む社会活動家たちの姿があった。
今回掲載した2022年の49人(日本編14人/グローバル編35人)のイノベーターの活動内容には、パンデミックの先を見据えた研究や事業が並ぶ。ある研究者は、ワクチンやインスリンを注射に代わって錠剤で体内に届ける方法を研究している。また他の研究者は、タンパク質の構造予測AIを開発し、その成果を科学者たちが利用できるようにした。新薬の開発方法を大きく変える可能性がある取り組みだ。
イノベーターの活躍は医学や生物学の分野にとどまらない。人類の大きな課題である気候変動に関わる「持続可能性」の分野では、高効率な太陽光発電パネル、電気自動車の航続距離を伸ばす新しいバッテリー技術、温室効果ガスの排出量を削減する「おいしい」代替食品など、多様なアプローチで気候変動の緩和を目指す人がいる。また、自然災害の被害を機械学習で迅速に把握する技術など、気候変動への適応に挑む人もいる。
本特集で紹介するイノベーターたちは、学術界や産業界においてすでに成果を認められた優れた人物である。だが、その挑戦はまだ途上にある。近い将来、より大きなブレークスルーを達成してくれるはずだ。
第2特集では、「テクノロジー大予測2023」として、主要なテクノロジー分野において今後予測される動向を、MITテクノロジーレビューの専門記者と執筆陣が解説した。一大ブームとなった生成A(I ジェネレーティブAI)の次の展開、Raas(サービスとしてのランサムウェア)によって被害拡大が続くサイバーセキュリティの今後、新型コロナウイルス
(SARS-CoV-2)で一挙に脚光を浴びたメッセンジャーRNA(mRNA)技術の展望など、興味深いテーマがそろっている。最新のイノベーターのリストと併せてお読みいただくことで、ここ数年のテクノロジーの進展とその社会的インパクトを理解するのに役立つはずだ。
(MITテクノロジーレビュー[日本版]編集部)
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.10
世界を変えるU35イノベーター 2022年版
- 定価:2,420円(本体2,200円+税)
- 発売日:2023年3月14日(印刷版)/3月21日(電子版)
- 判型:A4判/128ページ
- 形態:ムック(雑誌扱い)
- 発行:株式会社角川アスキー総合研究所
- 発売:株式会社KADOKAWA
- 雑誌コード:63693-20/ISBN:978-4-04-911153-8
Vol.10の主な収録記事
■世界を変えるU35イノベーター[日本編]
「テスラ超え」の自動運転車メーカーを目指す起業家、月面探査機の技術で農家の人手不足を救うロボット起業家、極細の多機能ファイバーで脳の謎を解明する研究者など、さまざまなテクノロジー領域で社会課題の解決に挑む、日本の若きイノベーター14人を紹介します。
■世界を変えるU35イノベーター[グローバル編]
欧州、米国、アジア、MENAなどの各地域から選出された世界の「35 歳未満のイノベーター」を紹介します。各分野を代表する35 人の若き才能たちは、どのような課題に着目し、どのようなテクノロジーを用いて解決しようとしているのか。将来のキープレイヤー候補の情報を押さえるのにも役立つ特集です。
■テクノロジー大予測2023
AIから量子コンピューター、宇宙開発、mRNAワクチンまで、重要テクノロジー分野の2023年のトレンドをMITテクノロジーレビューが徹底予測。各分野の専門家や有力プレイヤーへの取材をもとに、技術・資金・政策などの多角的な視点で解説します。
■世界を熱狂させた「生成AI革命」はクリエイティブの何を変えるのか?
2022年に突如として一大ブームになった「生成AI(ジェネレーティブAI)」。テキストで指示するだけで自然な文章を作成したり、リアルな画像を出力したりできるAIが、かつてないほど身近なものになっています。生成AIはクリエイティブをどう変えるのか? その誕生からいち早く報じてきた本誌ならではの視点で明らかにします。
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- MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]日本版 編集部
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