KADOKAWA Technology Review
×
ニュース Insider Online限定
Transatomic Reverses Key Nuclear Power Claims

MITと提携「効率75倍の原子力発電」は「2倍」の間違い

450万ドルを調達した原子力発電ベンチャーの見積もりに誤りがあった。効率75倍は間違いで、2倍だったのだ。MITの原子力科学・工学部と提携しており、MIT Technology Review(米国版)やWIREDが記事にして注目されていた。 by James Temple2017.02.28

原子力エネルギースタートアップ企業のトランスアトミック・パワーは、マサチューセッツ工科大学(MIT)教授陣の非公式調査を受け、見積もりに重大な間違いがあることが判明し、自社の先端原子炉テクノロジーに関する大胆な主張を取り下げていたことをMIT Technology Review編集部は掴んだ。

トランスアトミック・パワー(本社マサチューセッツ州ケンブリッジ)は、2011年にMITの原子力科学・工学部の学生2人が設立した企業だ。自社設計の溶融塩原子炉は、従来型原子炉の使用済み核燃料を再利用でき、はるかに効率よくエネルギーを生産できるしていた。2014年3月に公表したホワイトペーパーによれば、トランスアトミックの原子炉を利用すれば「軽水炉と比べて採掘ウラン1トン当たりで最大75倍の発電が可能になる」と公表していた。

こういった非常に高い技術力が効を奏し、ベンチャーキャピタルから何百万ドルもの資金調達に成功し、 相次いでメディアから高い注目を浴びた(本誌を含む)。さらにはロックスター級の技術顧問団の協力も得られた。だが2016年11月にトランスアトミックのWebサイトに掲載された文書では「75倍」という数値が「2倍以上」まで下げられた。さらに、現在ではトランスアトミックが開発中の原子炉は「蓄積された使用済み核燃料の量は減らせず」、燃料源としても使用できない、と書き改められた。保管に細心の注意が必要で、できるだけ増やすべきではない核のゴミをリサイクルできる希望は、トランスアトミックが設立当初、相当な世間の衆目を集めるうえで大きな役割を果たした。

「2016年初め、弊社の初期の分析に問題があることを把握し、誤りを修正する作業を始めました」とレスリー・デワン共同創業者はMIT Technology Review編集部の問い合わせに、メールで応じた。

今回の大幅修正は2015年末にMITのコード・スミス教授(原子力科学・工学部)による分析を受けたものだ。スミス教授は原子炉の物理特性を専門としている。

2015年末の時点で、トランスアトミックの主張に対して原子力科学工学の分野で疑念が高まり、トランスアトミックとの関係が密接である(初期の報道発表資料には、3年間の共同研究協定をMITの原子力科学部と結んでいると掲載され …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. What’s on the table at this year’s UN climate conference トランプ再選ショック、開幕したCOP29の議論の行方は?
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る