小型モジュール原子炉が前進、米規制委がニュースケールを最終承認
小型のモジュール式原子炉(SMR)が、ようやく現実のものへと近づこうとしている。SMRは以前から、従来の原子炉より早く、より安く建設できるとして注目されていたが、実際には稼働遅れや予算超過が続いている。 by Casey Crownhart2023.02.15
小型原子炉は10年以上前から、原子力発電の未来において大きな役割を果たすと言われてきた。
小型モジュール炉(SMR)は、その大きさによって、従来の原子力発電の大きな課題のいくつかを解決し、発電所をより早く、より安く建設し、より安全に運転できるようになる可能性がある。
その未来が、少しだけ近づいたかもしれない。オレゴン州に拠点を持つニュースケール(NuScale)は、この1カ月でSMR計画のいくつかの大きな節目を迎え、直近では、米国連邦政府から原子炉設計の最終承認を得ている。カイロス・パワー(Kairos Power)や日立GEニュークリア・エナジーなど他の企業も商業用SMRの開発を進めているが、この段階に達したのはニュースケールの原子炉が初めてだ。同社が米国で原子炉を建設するにあたっての最終規制ハードルの1つをクリアしたことになる。
ニュースケールが計画している原子炉のようなSMRは、建設や管理が容易なプラントで、必要な時に必要な場所で電力を供給できる。石炭などの化石燃料を使用した発電所を置き換えることで、気候変動を抑制するのに役立つだろう。
しかし、SMRが原子力発電の建設期間の短縮を約束してくれているとしても、ここまでの道のりは遅延とコスト上昇の繰り返しだった。ニュースケールの前途には、まだ何年もかかる道のりが控えており、この種の原子力発電を迅速かつ効率的に建設するには、依然としてどれだけの効率化が必要なのかが明らかになった。
小型化
ニュースケールのSMRは、現在の原子力発電所で使われているのと同じようなプロセスで発電する。加圧された炉心で原子を分裂させ、熱を放出させる。その熱を利用して水を蒸気に変え、タービンを回して発電する。最大の違いは、原子炉の大きさである。
かつて、原子力発電所は何十億ドルもかかる巨大事業、いわゆるメガプロジェクトだった。原子力を専門とするシンクタンク、ニュークリア・イノベーション・アライアンス(Nuclear Innovation Alliance)のプロジェクトマネージャーであるパトリック・ホワイトは、「10億ドルを超えると、プロジェクトの歯車が狂ってしまう傾向があります」と語る。
例えば、ジョージア州では現在、既存のボグトル(Vogtle)発電所に2基のユニットを追加設置する工事が進められている。計画されている2基はそれぞれ1000メガワット以上の能力を持ち、100万戸以上の家庭の電力を賄える。この原子炉は2017年に稼働する予定だったが、実際にはまだ稼働していない。10年前に建設が始まって以来、プロジェクトの総費用は倍増し、300億ドル以上になっている。
これに対し、ニュースケールは100メガワット以下の能力を持つ原子炉モジュールを製造する計画だ。このモジュールを発電所で組み合わせて数百メガワット規模にするが、ボグトル発電所の1基の能力より小さい。数百メガワットのSMR発電所は、数十万世帯の電力を賄うことができ、アメリカの平均的な石炭火力発電所と同等の規模になる。
さらに、ボグトル発電所の敷地が12平方キロメートル以上であるのに対し、ニュースケールのSMRプロジェクトは0.26平方キロメートル程度の土地しか必要としない。 …
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