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ネット企業が恐れる米注目裁判でウィキペディアが窮地に?
Stephanie Arnett/MITTR
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How the Supreme Court ruling on Section 230 could end Reddit as we know it

ネット企業が恐れる米注目裁判でウィキペディアが窮地に?

米国のネット企業の成長を支えてきた米「通信品位法230条」に関わる重大な判決が間もなく下される予定だ。一部の専門家はウィキペディアやレディットなどのコミュニティが窮地に追い込まれる可能性を危惧している。 by Tate Ryan-Mosley2023.02.22

「ゴンザレス対グーグル」訴訟が2月下旬、米連邦最高裁判所で審理される予定だ(日本版注:ユーチューブのアルゴリズムがISISの動画を推奨したのは違法だとして、テロの犠牲者遺族がグーグルを訴えた裁判)。通信品位法230条が最高裁で裁かれるという画期的な訴訟で、メタ、グーグル、ツイッター、ユーチューブといった大手テック企業への影響が大きな注目を浴びている。

 

ユーザーが作成した有害コンテンツに対する訴訟からソーシャル・プラットフォームを保護し、自社の裁量で投稿を削除する自由を与えた通信品位法230条は、巨大テック企業に爆発的な成長の基盤を与えてきた(児童ポルノなどの違法コンテンツに関しては、存在を認識した時点での削除が義務づけられている)。今回の訴訟は、さまざまな結果が予測される。230条が廃止または再解釈される場合、テック企業はコンテンツ・モデレーションの方法を変更し、プラットフォームのアーキテクチャを全面的に見直すことを余儀なくされる可能性がある。

だが、注目度が低いもう1つの大きな問題が危惧されている。訴訟の結果次第では、サイトの個々のユーザーが突如としてごく普通のコンテンツに対するモデレーションの法的責任を問われるかもしれないことだ。レディット(Reddit)やウィキペディアなどのサイトは、ユーザーが投稿したコンテンツを他のユーザーがネット上で編集、加工、削除、宣伝する「コミュニティ・モデレーション」に依存している。ユーザーがコンテンツに関して何らかの決定をするたびに、法的リスクを負わされることになったとしたら、何が起きるのだろうか。

端的に言えば、最高裁は大手プラットフォームだけでなく、コミュニティ・モデレーション頼りのレディットやウィキペディアといったより小規模なサイトにも影響を与えるような変更を230条に加える可能性がある、とエマ・リャンソは警告する。リャンソは非営利団体「民主主義テクノロジー・センター(Center for Democracy and Technology)」で、表現の自由プロジェクトの責任者を務めている。「突然、モデレーションが大きなリスクを伴うものになった場合、ネットの言論コミュニティにとって莫大な損失となるでしょう」(リャンソ責任者)。

1月に提出された第三者による意見陳述書でレディットの弁護士は、ゴンザレス対グーグル訴訟によって、レディットの特徴である賛成・反対投票機能が危機に曝されると主張した。ユーザーは「レディットの革新的な『賛成(Upvote)』『反対(DownVote)』機能により、どのコンテンツの注目を高めるのか、あるいは目立たなくするのかを直接決めることができます」と意見陳述書では述べられている。「このような活動はすべて、230条によって保護されています。プラットフォームのみならず、インターネットの『ユーザー』の免責を目的として230条は制定されているのです」。

ゴンザレス訴訟の核心は、コンテンツの「推奨(レコメンデーション)」と、コンテンツの表示(内容)は異なるのか否かという問題だ。これは、フェイスブック、ユーチューブ、ティックトック(TikTok)といったプラットフォームの原動力となっているレコメンデーション・アルゴリズムに広範な影響を与えると一般には理解されている。しかしそれは、ユーザーがコミュニティのモデレーターとして活動し、一部のコンテンツを他のコンテンツよりも目立たせるフォーラムにおいて、ユーザーがコンテンツを高く評価し …

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