格安ドローンで変わる戦争、異変は「ウクライナ以前」から
従来よりも安価な軍事用ドローンや、市販のホビー機を改造したドローンが戦争で使われるようになっている。2022年のロシアによるウクライナ侵攻で注目を浴びたが、それ以前から異変は起きていた。 by Kelsey D. Atherton2023.02.03
2001年11月14日、米国はアフガニスタンでアルカイダの幹部と思われる人物に対して、武装したドローン「プレデター(Predator)」による初のミサイル発射を実行した。この瞬間から、明らかに戦争の形態が変わった。その後の20年で、ドローンはテロとの戦いにおける最も象徴的な手段となった。高度な機能を持つ数千万ドルの米国製ドローンは限定した標的に対する殺害作戦に繰り返し使用された。しかし、世界に目を向けると、ドローンを運用できるのは強国に限られていた。
その後、愛好家向けのドローンや消費者向け電子機器のナビゲーション・システムや無線テクノロジーが向上したことで、第2の軍事用ドローンが出現した。誕生の場となったのは、ワシントンではなくイスタンブールだった。そして、2022年のウクライナ侵攻をきっかけに、軍事用ドローンが世界の注目を浴びるようになった。世界最強レベルの軍隊の1つであるロシア軍を抑える力があることが明らかになったからだ。
トルコのバイカル(Baykar)が製造したドローン「バイラクタルTB2(Bayraktar TB2)」は、始まって間もないドローン戦争の新時代が、さらに新しい段階に突入したことを示した。安価で容易に入手できるドローンによって、小国が新しい方法で現代戦を実施できるようになったのだ。ロシアによるウクライナ侵攻で、一般の人々もこうした新兵器を認識するようになったが、その他にも知るべきことがある。
2020年にアルメニアにおける一連の爆発シーンがユーチューブで公開され、この新しい戦争の形態を世界が初めて目撃した。映像では、回転するレーダー・アンテナを搭載している軍用車両に青緑の照準を定め、爆発した車両からもくもくと煙が立ち上る様子が、青みがかった映像で捉えられている。続いて同様に軍用車両を狙って攻撃した映像が2件記録されている。車両は土塁で守られているが、空からの攻撃に対しては何の防御にもならず、攻撃の後には何もないクレーターが残るだけだった。
2020年9月27日にユーチューブで公開されたこの動画は、アゼルバイジャン軍が第2次ナゴルノ・カラバフ戦争中に発表した数多くの映像のうちの1つだ。アゼルバイジャンが隣国のアルメニアに対して攻撃を始めたのは、まさにこの日だった。撮影したのはTB2だ。
米国政府が高性能のプレデター・シリーズの輸出を拒んだことで生まれた兵器市場の空白を、第2次ナゴルノ・カラバフ戦争などにおいてTB2が埋める形となった。バイカルはドローンの機種やその他の重要な軍事技術に課せられた輸出規制を回避しようと、すでに商業市場に出回っているテクノロジーを使って新しい戦争兵器を製造したのだ。
TB2は、トルコ国内製の部品と国際商業市場で調達した部品の両方を使って製造されている。撃墜されたTB2を調べたところ、米国企業から調達された部品が含まれていることが判明した。例えば、コロラド州を拠点とするトリンブル(Trimble)のGPS受信機、カリフォルニア州を拠点とするヴィアサット(Viasat)の空中モデム/トランシーバー、そしてナビゲーション無線はカンザス州を拠点とするガーミン(Garmin)の「GNC255」だ。一般消費者向けのGPS製品を製造しているガーミンは、TB2から発見されたガーミンのナビゲーション・ユニットに関して「軍事用として設計または意図されたものではなく、そもそもドローン用として設計または意図されたものですらありません」と声明を発表した。しかし、実際にはTB2に使われている。
TB2が商用技術を使う魅力的なメリットがもう1つある。米国製ドローンの「リーパー(Reaper)」が2800万ドルであるのに対し、TB2はわずか約500万ドルなのだ。TB2は2014年に開発されて以降、アゼルバイジャン、リビア、エチオピア、そして現在ではウクライナの紛争で使われている。TB2は従来の兵器よりもはるかに安価なため、リトアニア人はウクライナ軍が使うためのTB2を購入する資金の足しにしようと、クラウド・ファンディングを実施した。
TB2は戦闘に使用されている商用ドローン・テクノロジーの一例に過ぎない。不動産業者が物件調査のために使っている、中国・深センを拠点とするDJI(大疆创新科技有限公司)の「DJIマヴィック(DJI Mavic)」クアッドコプター(4つの回転翼を持つドローン)は、アフリカのブルキナファソとウクライナのドンバス地方での紛争で使われている。DJIのドローンは201 …
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