KADOKAWA Technology Review
×
【3/14東京開催】若手研究者のキャリアを語り合う無料イベント 参加者募集中
A Renewables Marketplace Promises to Turn Neighborhoods Into Power Plants

再生可能エネルギーのバーチャル発電所で送電網を効率化

再生可能エネルギーの余った発電量や各家庭のバッテリーなど、小さな設備をソフトウェアで統合して「バーチャル発電所」を作る実験が、オーストラリアの2地域で始まる。 by Jamie Condliffe2017.02.24

Rooftop solar panels, such as these in Melbourne, currently account for around 16 percent of renewable electricity generation in Australia.
オーストラリアでは現在、メルボルンにあるような屋上太陽光パネルが、再生可能電力発電の約16%を占める

住宅の太陽光パネルを活用し、不安定な電力の供給と需要を均一化するため、オーストラリアの新たな再生可能市場では住宅所有者の太陽エネルギーを管理するちょっとした支配人が登場している。

ガーディアン紙によると、オーストラリア政府が支援する「分散型エネルギー交換 (Distributed Energy Exchange)」という制度により、住宅所有者や企業は太陽光の発電能力や貯蔵能力を効率的に貸し出せるようになった。たとえば、スマートデバイスを使えば、送電網のどこかで余剰電力が使えるようになった時、別の建物の装置が予備電池の容量を提供できるのだ。

個々の建物のシステムは単独では非力でも全体として見れば非常に大きな規模がある。たとえば、テスラ・パワーウォールのような家庭向け電池は5kWの電力を供給でき、仮に5000世帯の電池が同時に稼働すれば、25MWの電力を供給できる。これは小さな値ではない。

この制度によって、オーストラリアの送電網には、新たな発電施設を建設せずに、需要と供給がより一致するようになるメリットがある。電力の使用が緩やかな時間帯にエネルギーを蓄えれば、各装置をつなげたネットワークは電力需要の急増により上手く対処できる。また、太陽発電の断続性を軽減させるのにも同じ考えが役立つ。

オーストラリアの取り組みの基本的なコンセプトには「バーチャル発電所」 (ソフトウェアと蓄電池により、個々の小規模な太陽パネルを組み合わせ、ひとつの大規模な資源として扱う)がある。バーチャル発電所の試験はドイツ米国で多数あるが、これまでのところ、バーチャル発電所のテクノロジーが広い範囲に適用されたことはない。

オーストラリアの市場での実験も、最初は狭い範囲でされるだろう。今回の試験はふたつの地域で実施され、それぞれの地域には約5000世帯が住んでいる。

(関連記事:The Guardian, “Virtual Power Plants Get Around Solar Power’s Intermittency Problem,” “Real Electricity Flows from Virtual Power Plants”)

人気の記事ランキング
  1. AI reasoning models can cheat to win chess games 最新AIモデル、勝つためなら手段選ばず チェス対局で明らかに
  2. Promotion Innovators Under 35 Japan × CROSS U 好評につき第2弾!研究者のキャリアを考える無料イベント【3/14】
  3. OpenAI just released GPT-4.5 and says it is its biggest and best chat model yet 限界説に挑むオープンAI、最後の非推論モデル「GPT-4.5」 
  4. One option for electric vehicle fires? Let them burn. EV電池火災、どう対応?「燃え尽きるまで待つしかない」と専門家
タグ
クレジット Photograph by Scott Barbour | Getty
ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
▼Promotion
U35イノベーターと考える 研究者のキャリア戦略 vol.2
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る