テスラ元CTOはなぜEV電池リサイクルに転じたか? 課題と展望を聞く
テスラの初代CTOを務めたJ. B. ストラウベルは同社を退職後、バッテリー・リサイクルの企業であるレッドウッド・マテリアルズを立ち上げた。課題と今後の展望について話を聞いた。 by Casey Crownhart2023.01.24
テスラで最高技術責任者(CTO)を務めたJ.B.ストラウベルは、電気自動車(EV)を世界に広める上で大きな役割を果たした。テスラのバッテリー技術の鍵となる部分を発明し、テスラの充電ネットワークを確立したとされる人物だ。ストラウベルは2019年にテスラを辞めた後、新たなベンチャーを始めた。バッテリー・リサイクル企業であるレッドウッド・マテリアルズ(Redwood Materials)だ。
レッドウッド・マテリアルズはこれまでに8億ドル近くの資金を調達しており、ネバダ州に10億ドル規模の施設を建設中だ。最近になってさらに、サウスカロライナ州チャールストン郊外に第2拠点を建設する計画を発表した。計画によれば、レッドウッド・マテリアルズの施設では使用済み電池からコバルトやリチウム、ニッケルなどの貴重な金属を抽出し、新しい電池に使えるカソード(正極)とアノード(負極)を生産する予定だ。
再生可能エネルギーへ移行するために、バッテリーのリサイクルはどのような役割を果たせるのか? 今後の展開について、ストラウベルに話を聞いた。
なお、以下のインタビューは、発言の趣旨を明確にするため、要約・編集されている。また、記者はストラウベルがCTOを務めていた2016年当時、テスラにインターンとして勤務したが、直接的に一緒に働いた経験はない。
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——テスラを辞めようと思った理由は何でしょうか? また、次の一歩として電池のリサイクルを選んだ理由は?
確かにテスラはすばらしい挑戦でした。ですが、成功するにつれて、バッテリーが大規模化すればするほど、さらに多くの原材料や部品、電池そのものを入手しなければならないことがだんだん明らかになってきていきました。これは、当時でもぼんやりと見えていたボトルネックであり、業界全体の課題でした。現在はこのことがさらに明確になっていると思います。
バッテリー・リサイクルの思い付きは、当時としてはかなり型破りなものだったと思います。あなたの質問もそれを示唆していますよね。ワクワクする華やかな自動車メーカーを辞めて、ゴミを扱う仕事を始めたのはなぜか? と聞いているわけですからね。私は、起業家精神というものには少し逆張りが必要だと思います。そして、本当に有意義なイノベーションを起こせるのは多くの場合、従来のやり方ではないだろう、と。
——エネルギー転換において、電池のリサイクルが重要だと考えるのはなぜですか?
持続可能性を実現するための手段として、電化と電池に頼る機会が現在ますます増えています。これは良いことでしょう。私自身、自分のキャリアの大半でこの考え方を支持し、加速させることに貢献してきたのですから。人類がすべてを電化してしまわなければ、気候変動の目標は完全に暗礁に乗り上げてしまうと思います。しかし一方で、完全な電化には驚くべき量の電池が必要に …
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