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中国テック事情:メイド・イン・チャイナは変わらない
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Chinese chips will keep powering your everyday life

中国テック事情:メイド・イン・チャイナは変わらない

半導体産業における米国と中国の対立が高まっている。米国はさまざまな規制を導入しているが、汎用的な旧世代のチップでは逆効果となる可能性がある。 by Zeyi Yang2023.01.16

この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。

せっかくなので、今回のこの記事では2023年を展望してみたい。私は、MITテクノロジーレビューの「2023年のテクノロジー大予測」シリーズで、世界の半導体産業で今年、何が起きるのかを記事にまとめている。

その内容を手短に紹介すると、すでに政治的な圧力にさらされているグローバルなチップのサプライチェーンは2023年、地政学上の理由でさらに厳しい状況になるとの見方を多くの専門家が示している、というものだ。

2022年のほぼ丸々1年をかけて、米国政府は中国をチップ産業から締め出すための準備をしてきた。中国へのチップの輸出を制限するために、オランダおよび日本との協力関係まで構築している。こうした措置を受けて、かつては市場主導で動いていたチップ・ビジネスも、冷戦のような環境を生き抜くため、緊急対応策を打ち出すようになった。例えば、中国以外に工場を建設したり、サプライチェーンを多様化させたりしているのだ。2023年は同様の計画が相次ぎ発表されることになるかもしれない。そして同時に、米国政府による懲罰的な制限が導入され、米国内のチップメーカーに対する産業助成金の支給が始まることで、新たな企業がトップに躍り出たり、引き続き中国に販売している企業が懲罰の対象になったりする可能性がある。

米国、中国、台湾、そして欧州が、チップ産業でどのような動きに出る可能性があるのか? 詳しくはこちらの記事全文をお読みいただきたい。

記事には盛り込めなかったことについても、ここで取り上げておこう。チップ技術の遮断によって、どちらかというと本来の意図に反して生じるであろう帰結についてだ。確かに、中国のチップ産業は、ハイエンド分野で悪影響を受けるだろう。ただ、私たちの日々の生活では旧世代のチップが依然として広く使われている。そのため、中国は旧世代のチップの製造において、より大きな役割を担うことになるかもしれないということだ。 

直感に反する話に聞こえるかもしれない。米国による2022年の制限は、中国の半導体産業に大きなダメージを与えるために導入されたはずではなかったのだろうか。

確かにそうだ。しかし、米国政府は、その影響を先進的なチップに意図的に限定している。例えば、ロジックチップ、つまりデータの格納ではなくタスクを実行するチップでは、14ナノメートル以下のノードのチップ製造テクノロジーを用いて製造する能力のみが米国政府による規制対象だ。これらのチップは、およそ8年前から使われるようになったものだ。つまり、それより古いテクノロジーを用いたチップ製造は、規制の対象外なのだ。

ここで考えなければならないのは、家電製品、自動車、その他の日用品において、旧世代のチップが幅広く使用されているという事実だ。中国の電子製造業全体を破壊してしまうほど広範な制限を米国が課せば、中国政府を過度に刺激することになる。そうなれば、中国政府は米国に損害が生じるような報復行動をとるに違いない。英国に拠点を置くコンサルタントで、半導体企業の元幹部であるウォズ・アフメドは、「誰かを怒らせたいなら、追い込んで逃げ道がないようにすればいいのです。そうすれば相手は向かってきて、きついパンチを浴びせてくるでしょう」。

そうならないように、米国は限られた分野、例えば中国のスーパー・コンピューター、人工知能(AI)、および先進的な武器で使われる可能性がある最先端のテクノロジーのみに痛みを与えようとしているのだ。

コンサルティング企業オムディア(Omdia)の研究部長で、中国の半導体市場を専門とするフー・ホイは、「ハイシリコン(HiSilicon)を除いて、先進的なプロセスに到達している中国企業はほとんど存在していないため、(米国の)政策が中国国内のチップ産業に対して与える短期的な影響は極めて限定的なものです」と言う。「しかも、ハイシリコンはすでに3年前に(ブラックリストに)載っています」。

ローエンドの旧世代チップは、中国にすでに大きな優位性がある分野でもある。ローエンドの旧世代チップとは、自動運転車のAIを動かすためのチップではなく、特定の部品、例えばエアーバッグなどを制御するチップのことだ。IoTのテクノロジーが急速に発展する中、それほど先進的ではない小型のチップにも、依然として大きな需要はある。

イースト・ウェスト・フューチャーズ・コンサルティング(East West Futures Consulting)で中国のテック産業の世界的な影響について調査しているジョン・リーは、「こうした旧世代チップは今後も中国で製造されます。少なくとも、バイデン政権が通達している現在の規制においてはそのはずです。そのため、当然のことながら、欧州、日本、および韓国などの外国企業にとっては、今後も中国と取引を続ける大きなインセンティブと大きな市場が残るわけです」と話す。

中国が優位性を持つ理由の1つは、成熟したローエンドのテクノロジー市場においては、価格こそが最重要ポイントであることが挙げられる。そして中国は、安い人件費と政府からの潤沢な補助金のおかげで、これまでも低コストでの大量生産を非常に得意としてきた。

すでに欧米では、中国がローエンドのチップを今後完全に独占するのではないかと危険視する動きも出ている。ローフェア(Lawfare)で公開されたある報告は、中国がローエンドのチップを完全に独占する可能性を、「サプライチェーンの大きな脆弱性」と呼んでいる。「中国は、こうしたテクノロジーで市場を飽和させることができます。普通の企業は、そのレベルでは収益を出せないので、競争できません」。テックインサイツ(TechInsights)のエコノミストであるダン・ハッチソンはロイター通信にこう語っている

米国を含むその他の国々は、それでも旧世代のチップの市場を一部でも獲得しようと試みるだろう。2022年に施行された米国の半導体・科学法(CHIPS法)では、米国内での旧世代テクノロジーでのチップ製造のインセンティブ予算として、20億ドルが割り当てられている。また、専門家らは、欧州連合(EU)も今後2年で独自の法制度を導入する可能性があるという。

しかし、チップ産業は、設備投資が実際の製品につながるまでに長い時間がかかることで知られている。台湾に拠点を置くTSMCなどの外国企業が米国工場の建設に向けた投資計画を発表しているとはいえ、こうした企業は政府からの一貫した支援がなければ、それ以上の製造能力を米国に移すことはないだろう。米国では、政治環境が二極化して不安定であるため、政府からの一貫した支援が約束されることはなかなか見込めない。フー・ホイは、「私の考えでは、(これらの企業が)その約束を守って実行するつもりかどうか、もう少し待って見極める必要があります」と話す。

リーは、こうした動向を、現在のチップの覇権争いから生じる興味深いトレンドの1つと捉えている。リーは、「こうした製造能力の多くは、すでに中国にあります。(成熟した)ノードでの新たな製造能力のほとんどは、中国で構築されています。米国およびEUでも同じような製造能力を構築するにあたって、必要な資金と政治的意思が存在していても、(チップ製造機器の供給に)限界があるのです」と言う。「より汎用的かつ大量生産型で、利益率も洗練度も低いものの、依然として欠かせないチップの供給」における中国の存在感は、「小さくなるどころか大きくなっています」と、リーは付け加える。

そのため、今後を展望する上では、2つの重要な疑問が残されている。中国はハイエンド分野の構築にてこずりつつも、旧世代のチップ産業は繁栄するのだろうか。それとも、米国政府は中国をもっと締め付けるために、さらなる制限を導入するのだろうか。私は予想が大好きだが、これらの問いに対するはっきりとした答えは2023年には出てこないと考えている。地政学的な不安定性をはらむ新時代に突入する半導体産業を見る上では、これらの疑問を念頭に置いておくべきだろう。

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環境ビジネスで政府系企業が躍進

中央政府が中国を世界の気候変動対策のリーダーとして位置付けようとしている中、地方政府は環境保護ビジネスを活用して重要なプレイヤーになりつつある。中国のシンクタンクの最近の分析によると、過去5年間で中国の34の省政府のうち半数が、政府保有の「スーパー企業」を立ち上げて、環境分野で政府との契約獲得に注力しているという。それぞれ規模も専門分野も異なるものの、廃水処理、廃棄物処分、環境モニタリング、または気候投資管理などの分野でサービスを提供している。

こうしたスーパー企業は政府系企業として政府のお墨付きと資金援助を受けており、調達プロセスにおいては優先的に扱われることが多い。ただ、民間企業とも競争しなければならないし、政府系企業同士の競争もある。成功しているスーパー企業の中には年間数億ドル規模の契約を獲得する企業もある一方、十分な契約を獲得できずに苦しんだり、倒産寸前に追い込まれたりしている企業もある。

あともう1つ

何らかの政治についてのセンシティブな会話を家族としたことがあるだろうか? 中国では多くの若者が、反体制的な意見を友人や家族の前で初めて口にする際、ソーシャルメディア上にも投稿している。これを「政治出柜」、つまり政治についてのカミングアウトの瞬間と呼ぶ。ゼロコロナ政策に反対するデモの際には、多くのカミングアウトがあった。若者たちが街頭でデモに参加したり、ウィーチャット(WeChat)のタイムラインや家族のグループチャットにデモ参加者への支援の言葉を綴ったりした。一部の若者にとって反体制的な政治信条を告白することは、セクシャリティについてのカミングアウトと同じぐらい、あるいはそれ以上の勇気が必要なのだ。

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MITテクノロジーレビューで中国と東アジアのテクノロジーを担当する記者。MITテクノロジーレビュー入社以前は、プロトコル(Protocol)、レスト・オブ・ワールド(Rest of World)、コロンビア・ジャーナリズム・レビュー誌、サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙、日経アジア(NIKKEI Asia)などで執筆していた。
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