KADOKAWA Technology Review
×
【冬割】 年間購読料20%オフキャンペーン実施中!
リチウムイオン以外の選択肢は台頭するか? 23年の電池業界を占う
AP Photo/Sean Rayford
whats-next-in-tech 無料会員限定
What's next for batteries

リチウムイオン以外の選択肢は台頭するか? 23年の電池業界を占う

電気自動車から再生可能エネルギーの貯蔵まで、バッテリーの重要性がますます高まっている。2023年は米国政府の大型投資に後押しされた、新たな電池技術の登場と生産増が期待される。 by Casey Crownhart2023.01.18

年々、動力としてのバッテリーの採用が世界で進んでいる。2022年には世界の自動車販売の10%超を電気自動車(EV)が占め、2020年代末までにこの比率は30%に達する見込みだ。

世界を変えるU35イノベーター2022年版
この記事はマガジン「世界を変えるU35イノベーター2022年版」に収録されています。 マガジンの紹介

こうした成長を後押しする形で政策整備が世界中で進んでいる。米国で最近制定された気候対策規制は、バッテリー製造とEV購入のインセンティブに数十億ドルを投入するものだ。欧州連合(EU)や米国のいくつかの州では、2035年以降ガソリン車を禁止する法令案も可決されている。

ただし、EVへの移行には、現在よりも質が高く、価格も手頃なバッテリーが大量に必要となる。

現在のEVの多くには、リチウムイオン電池が使用されている。ノートPCや携帯電話に数十年にわたって使用されているテクノロジーだ。こうした長年に及ぶ開発は、リチウムイオン電池の価格を押し下げ、性能を改善した。そのため、今日のEVはガソリン車に引けを取らない価格に近づき、充電なしで数百キロメートル走行できる水準に達している。リチウムイオン電池の用途は新たに広がり、送電網向け蓄電池といった、風力や太陽光などの間欠的な再生可能エネルギーによる電力のバランスを取るためにも使用されている。

ただ、改善の余地は依然として大きい。大学の研究室や企業がともに、容量の増強、充電時間の短縮、コスト削減など、このテクノロジー改善のための手段を探っている。目標は、安価に送電網向け蓄電池を実現でき、EVの走行可能距離を伸ばせる、もっと安い電池を発明することだ。

同時に、コバルトやリチウムなどの主要電池材料の供給への懸念から、標準的なリチウムイオンの化学構造に代わる材料の探索が進められている。

EVと再生可能エネルギーへの需要が高まり、バッテリー開発が盛り上がる中でひとつ確かなことは、バッテリーが再生可能エネルギーへの移行において重要な役割を果たすということだ。2023年に予想される展開を紹介しよう。

抜本的な再考

2023年には、EVのバッテリーに関するまったく異なるアプローチの進展が予測される。ただ、こうしたアプローチが商業的に成功するまではしばらくかかるだろう。

2023年に注目しておきたいのは、いわゆる固体電池の進歩だ。リチウムイオン電池とこれに関連する化学技術は、電荷を運ぶ液体電解質を使用している。固体電池は、この液体電解質をセラミックなどの固体材料に置き換えたものだ。

こうした置き換えにより、小さなスペースにより多くのエネルギーを詰め込めるようになり、EVの走行可能距離の延長にもつながる可能性がある。また、固体電池は電荷の移動が速いため、充電時間も短くできる。固体電池技術の支持者は、電解液に使用される溶剤には可燃性のものがあるため、火災の危険性が減って安全性も向上するとしている。

固体電池にはさまざまな化学物質が使用され得るが、商用に向けて有力な候補となっているのがリチウム金属だ。例えば、クォンタムスケープ(Quantumscape)は、リチウム金属テクノロジーに注力し、2020年の株式一般公開前に数億ドルを資金調達している。同社は、フォルクスワーゲンとの間で2025年までにフォルクスワーゲン車に電池を搭載する契約を結んでいる。

ただ、バッテリーをまったく新しい形で再発明するのは難しいことが判明しており、リチウム金属電池には経時的な劣化と製造面での課題の懸念がある。クォンタムスケープは、2022年12月のニュースリリースで自動車業界のパートナー企業にテスト用のサンプルを出荷したことを明かしている。固体電池の車載を実現する上で大きなマイルストーンだ。ソリッド・パワー(Solid Power)などの他の固体電池メーカーも、バッテリーの開発とテストに取り組んでいる。ソリッド・パワーも2023年に、大きなマイルストーンに達する可能性があるが、同社のバッテリーが年内に車載され、実走行に至るとは考えに …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【冬割】実施中! 年間購読料20%オフ!
人気の記事ランキング
  1. Promotion Innovators Under 35 Japan × CROSS U 無料イベント「U35イノベーターと考える研究者のキャリア戦略」のご案内
  2. AI’s search for more energy is growing more urgent 生成AIの隠れた代償、激増するデータセンターの環境負荷
▼Promotion 冬割 年間購読料20%off
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る