トヨタの賭け、EV一辺倒ではなくハイブリッド車を売り続ける理由
ハイブリッド車で世界をゼロエミッションにはできないが、気候変動への影響を多少なりとも緩和できる。世界はガソリンを使う車両の排除に向かっているが、トヨタは今後しばらく、ハイブリット車にも需要があると賭けている。 by Casey Crownhart2023.01.23
私たちが知っている「クルマ」は、もうすぐ消えるかもしれない。
2015年のパリ環境協定では、地球温暖化による気温上昇を1.5℃未満に抑えるために、2050年を温室効果ガス排出量の実質ゼロを達成する国際的な期限とした。つまり、ガソリン車は2050年までに道路上からほぼ姿を消さなければならないということだ。自動車の耐用年数が一般的に15〜20年であることから、2050年にネットゼロを達成するには、2035年頃からガソリン車の新規生産はできなくなる可能性が高い。
ゼネラルモーターズ(GM)、ボルボなど複数の大手自動車メーカーは、この移行を見越して、2035年またはそれ以前に電気自動車(EV)だけの生産に切り替える計画を発表している。しかし、すべての自動車メーカーが同じ方針ではない。
特に、世界最大の自動車メーカーのトヨタは、EVだけに重点を置くのではなく、水素燃料電池車を含むさまざまな選択肢を提供する計画を強調している。トヨタの広報担当者はMITテクノロジーレビューの取材に対し、同社は特定の種類の車両をどれだけ多く販売できるかよりも、いかに迅速に二酸化炭素排出量を削減できるかに重点を置いていると話した。
トヨタは、小型バッテリーを使って電気で近距離走行できるプラグイン・ハイブリッド車など、新型ハイブリッド車を次々と発表している。2022年11月には、プラグイン・ハイブリッド車「プリウス・プライム(日本ではプリウスPHV)」の2023年モデルを発表した。
環境保護団体の中には、トヨタのEVへの取り組みが遅れていることに対して批判的な意見もある。ゼロエミッションを達成するためには完全なEVが必要であり、それは早ければ早いほど望ましいとの主張だ。
しかし、トヨタの豊田章男CEO(最高経営責任者)は最近の米国メディアとのインタビューで、2030年までに新車販売台数の半分をEVにするという米国の目標について「難しいのではないか」と述べ、自動車産業が化石燃料からの方向転換をどれだけ早く実行できるか疑問を投げかけている。トヨタは、2030年までにEVの販売台数を350万台(現在の年間販売台数の35%)までにする計画だが、ハイブリッド車もまた手ごろな価格の選択肢として顧客ニーズがあり、排出量削減に重要な役割を果たせると考えている。
2種類あるハイブリッド車
ハイブリッド車と呼ばれるものには、2種類の異なるカテゴリーの車両が含まれる。従来のハイブリッドEVは、小型バッテリーを搭載したもので、走行中にブレーキで失われるエネルギーを回収し、ガソリンエンジンを補完している。そのため、バッテリーの電力では数キロメートル程度しか走行できず、しかも低速走行となる。その代わり、この種のバッテリーは、燃費の向上やトルクの増強といった働きをしている。従来型のハイブリッド車の代表格としては、トヨタの初代プリウスが挙げられる。
一方、プラグイン・ハイブリッド車は、従来型のハイブリッド車の約10倍のバッテリーを搭載しており、電源に接続して充電できる。プラグイン・ハイブリッド車は通常、電気のみで40〜80キロメートル程度走行でき、それ以上の距離はガソリンエンジンに切り替える。2012年から販売開始したプリウス・プライムは、こうしたプラグイン・ハイブリッド車に分類される。
米国では、完全なEVやプラグイン・ハイブリッド車よりも、従来型のハイブリ …
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