日本企業の月面着陸も
注目計画が目白押しの
2023年の宇宙開発
2023年は宇宙開発の「当たり年」になりそうだ。今後12カ月の間に、日本のスタートアップ企業の月面着陸をはじめ、商業宇宙遊泳、太陽系に関する新たな探査ミッション、超大型ロケットの打ち上げなどが予定されている。 by Jonathan O'Callaghan2022.12.30
2023年、人類は月へ回帰する。2020年代後半に人類を再び月面へ送るという米国の新たな取り組みに触発され、今後12カ月間は無人の月着陸計画が複数予定されている。民間宇宙企業と国家機関の両方が、地球のすぐ隣の天体である月へと向かう約38万キロメートルの旅を計画しており、着陸能力テストや使用可能な水氷の探査などをすることになっている。
- この記事はマガジン「世界を変えるU35イノベーター2022年版」に収録されています。 マガジンの紹介
過去何年かは「火星一色」であったとロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの宇宙政策専門家であるジル・スチュアート博士は言う。「現在、月へと回帰しています」。
2023年に計画されているのは月着陸計画だけではない。民間有人宇宙飛行の分野でも、大きな前進を見ることになりそうだ。史上初の商業宇宙遊泳、太陽系の他の目的地へ向かい、あるいはそこから帰還するという感動的なミッション、そして新型ロケットの打ち上げなどが予定されている。
2023年に向けて準備が進んでいる宇宙計画を以下に紹介しよう。
月面着陸
2023年初頭には、すでに着陸船が月へ向かっているはずだ。日本企業iSpace(アイスペース)が開発した民間宇宙船「ハクトR(Hakuto-R)」は、スペースX(SpaceX)の「ファルコン(Falcon)9 」ロケットで2022年12月に打ち上げられ、月へ向かう4カ月の旅の途中にある。月面では日本とアラブ首長国連邦(UAE)の宇宙機関が作った探査車(ローバー)を配備することになる。ハクトRは3月の月面着陸を予定しており、もし成功すれば、月面に着陸する初の民間ミッションとなる可能性がある。
「可能性がある」というのは、米国の民間着陸船2機も同時期の月面到達を予定しているからだ。1機はアストロボティック(Astrobotic)の「ペレグリン(Peregrine)」、もう1機はインテュイティブ・マシーンズ(Intuitive Machines)の「ノバC(Nova-C)」だ。いずれも米国航空宇宙局(NASA)が支援するミッションであり、月の環境を調査するさまざまな機器を搭載している。NASAは、2020年代後半に計画している有人ミッションに先立ち、月への商業的関心を喚起することを目的として「商業月面物資輸送サービス(CLPS:Commercial Lunar Payload Services)」プログラムを立ち上げており、これらはその一環だ。
CLPSプログラムの最初のミッションである「アルテミス1(Artemis I)」計画では、NASAの巨大な新型「スペース・ローンチ・システム(Space Launch System)」ロケットで2022年11月に、無人宇宙船「オリオン(Orion)」が月へ打ち上げられた。アルテミスの次のミッションである有人での月周回飛行は2024年以降に計画されており、今後12カ月間は、月面調査、さらには将来の有人ミッションのターゲットにもなり得る水氷の探査など、アルテミス計画にとってとりわけ重要な基礎を敷くことになる。「月はここ何年もないほど注目を浴びるようになっています」。元NASAの有人宇宙飛行担当責任者で現在は米国のエアロスペース社(Aerospace Corporation)に勤務するジョン・カワートは言う。
インテュイティブ・マシーンズは、2023年に2回目の月着陸を計画している。他にもインドと日本の宇宙機関が、それぞれ「チャンドラヤーン3(Chandrayaan-3)」と「SLIM(スリム:Smart Lander for Investigating Moon)」で月面着陸を予定している。インド …
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