巨大食品グローバル企業のネスレが、自動車メーカーのフォードと同様、世界中すべての自社施設の水利用状況を調査している。ネスレは2002年から2015年にかけて、水1立方メートルあたりの食料生産量を2倍以上に伸ばした。
米国で続く干ばつの中心地(カリフォルニア州モデスト市)にある牛乳工場では、米国内で販売される「カーネーション」ブランドの練乳缶の全てを生産している。1993年の創業以来、この工場は生乳から約半分の水分を蒸発させて練乳を生産しているが、残った「牛乳水」はすべて廃棄してきた。一方、工場にはモデスト市水道局の上水道が引き込まれ、蒸気にして牛乳の水分を飛ばしたり、食品加工設備を洗浄したり、温水空調システムや飲料水に使われている。
結果として、モデスト工場は週に約640万リットルの飲料水を購入し、約190万リットルの「牛乳水」を捨てていることになる。
だが、状況は変わろうとしている。今年、ネスレの工場は逆浸透装置の設置を進めて、牛乳から取り出した蒸留水を再使用して、モデスト市から購入している水の70%を節減できるようにしたのだ。
再生水の工場での使用が規制当局からが認可されれば、工場で使う水のすべてを浄化して再使用することで、工場に必要な水は原材料の牛乳でまかなえるようになり、ネスレの「水を使わない」工場が実現する。