KADOKAWA Technology Review
×
Nestlé Goes on a Water Diet

牛乳の蒸留水で練乳を製造
ネスレの「無水」工場

練乳工場の工程を見直すことで、ネスレは水の使用量を大幅に削減できそうだ。 by Charles Fishman2016.05.23

巨大食品グローバル企業のネスレが、自動車メーカーのフォードと同様、世界中すべての自社施設の水利用状況を調査している。ネスレは2002年から2015年にかけて、水1立方メートルあたりの食料生産量を2倍以上に伸ばした。

shutterstock_331412867

米国で続く干ばつの中心地(カリフォルニア州モデスト市)にある牛乳工場では、米国内で販売される「カーネーション」ブランドの練乳缶の全てを生産している。1993年の創業以来、この工場は生乳から約半分の水分を蒸発させて練乳を生産しているが、残った「牛乳水」はすべて廃棄してきた。一方、工場にはモデスト市水道局の上水道が引き込まれ、蒸気にして牛乳の水分を飛ばしたり、食品加工設備を洗浄したり、温水空調システムや飲料水に使われている。

結果として、モデスト工場は週に約640万リットルの飲料水を購入し、約190万リットルの「牛乳水」を捨てていることになる。

だが、状況は変わろうとしている。今年、ネスレの工場は逆浸透装置の設置を進めて、牛乳から取り出した蒸留水を再使用して、モデスト市から購入している水の70%を節減できるようにしたのだ。

再生水の工場での使用が規制当局からが認可されれば、工場で使う水のすべてを浄化して再使用することで、工場に必要な水は原材料の牛乳でまかなえるようになり、ネスレの「水を使わない」工場が実現する。

人気の記事ランキング
  1. Why handing over total control to AI agents would be a huge mistake 「AIがやりました」 便利すぎるエージェント丸投げが危うい理由
  2. An ancient man’s remains were hacked apart and kept in a garage 切り刻まれた古代人、破壊的発掘から保存重視へと変わる考古学
  3. OpenAI has released its first research into how using ChatGPT affects people’s emotional wellbeing チャットGPTとの対話で孤独は深まる? オープンAIとMITが研究
タグ
クレジット Sheila Fitzgerald / Shutterstock.com
翻訳者
山口 桐子日本版 翻訳家
フリーランスで翻訳をしています。大学では物理学を専攻し、卒業後は米系投資顧問会社で日本株の証券アナリストやファンドマネージャーとして国内外の企業の調査をしていました。電力・ガスや素材などさまざまな産業を担当しましたが、テクノロジー分野が一番長く、興味もあります。MITテクノロジーレビューが発信する世界最先端のテクノロジーとその面白さを日本の皆さんに紹介していきたいと思っています。
チャールズ フィッシュマン [Charles Fishman]米国版 ゲスト寄稿者
フロリダ州マイアミ出身でハーバード大学を卒業した米国のジャーナリスト。『ウォルマート効果:世界最強企業の仕組みとアメリカ経済の変容(The Wal-Mart Effect: How the World's Most Powerful Company Really Works--and HowIt's Transforming the American Economy)』(2006年刊、未邦訳)などの著書がある。
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る