KADOKAWA Technology Review
×
始めるならこの春から!年間サブスク20%オフのお得な【春割】実施中
メタバース・ビジネス新展開
25年前に亡くなった
伝説のラッパーが復活ライブ
Courtesy of Meta
カルチャー Insider Online限定
I just watched Biggie Smalls perform ‘live’ in the metaverse

メタバース・ビジネス新展開
25年前に亡くなった
伝説のラッパーが復活ライブ

1997年に亡くなった有名なラッパーのアバターが、メタのホライゾンワールドで復活。現役のラッパーたちとの共演を果たした。関係者が新たなビジネスに期待する一方で、倫理的な問題も懸念される。 by Tanya Basu2022.12.21

2022年12月16日のある瞬間、ビギー・スモールズがステージに1人で立っていた。スポットライトに照らし出された赤いベルベットスーツ姿のビギーが、事前に録音された歓声の中で「モー・マネー・モー・プロブレムス(Mo Money Mo Problems)」の歌詞をラップすると、オレンジ色のスニーカーがビートに合わせてくるくると舞った。

混乱するのも無理はないだろう。スモールズは24歳だった1997年に銃で撃たれ、史上最高のラッパーの1人として音楽的にも文化的にも大きな遺産を残し、この世を去っている。だが、スモールズ(本名はクリストファー・ウォレス)は12月16日、メタのメタバース・プラットフォームである「ホライゾンワールド(Horizon Worlds)」に完全な姿で登場した。歌詞の合間に息をついたり、リズミカルに拳を突き上げたりしている姿は、まるで生きているかのように見えた。パフォーマンスはここから視聴できる(フェイスブックへのログインが必要)。

https://www.youtube.com/watch?v=2rphmwqk5vs

スモールズの超リアルなアバターは、見事な技術的偉業というだけのものではない。メタバース・プラットフォームが普及すればすぐに直面することになる、2つの大きな疑問に対する重要なテストでもある。その疑問とは、亡くなったアーティストのアバターのパフォーマンスを人々がお金を払って見るか、そして、そのビジネスは倫理的か、ということだ。

亡くなったアーティストを復活させた例は、スモールズが初めてではない。ホログラムによるパフォーマンスは、今は亡きミュージシャンを蘇らせる方法として、ずっと以前から物議を醸しつつも人気があった。バディ・ホリー、ホイットニー・ヒューストン、マイケル・ジャクソン、エイミー・ワインハウスなどは全員、死後にホログラム化され、ライブが開かれている。最も有名なホログラムショーの1つは、1996年に亡くなったスモールズのライバル、トゥパック・シャクールが、2012年のコーチェラ(日本版注:米国の野外音楽フェスティバル)で「パフォーマンスした」ものだ。

https://www.youtube.com/watch?v=TGbrFmPBV0Y&ab_channel=SnoopDoggTV

しかし、ホログラムには本質的に限界がある。パフォーマンスしているアーティストが3Dに見えるような錯覚を得るために、観客は特定の角度で座らなければならない。メタバースは、人々がより実物そっくりのアバターを見ることができる方法を提供し、さらには、アバターとやり取りできるようになるかもしれない。スモールズのライブを企画したチームは、まさにその可能性を近い将来実現できることに期待しているのだ。

12月16日のスモールズのパフォーマンスで注目されるのは、そのリアルさである。その動きや独特の癖、顔の表情は驚くほどリアルで、生きているかのようだった。

だが、スモールズがアバターであることを観客に思い出させるハプニングも、いくつかあった。生きているラッパーたちが登場するシーンでは、スモールズが共演者とぶつかっているように見えた。他のラッパーが歌詞をサポートする時には、スモールズがパフォーマンスしている中央の円からふらふらと外に出てしまい、仲間のラッパーに対する反応が生きているパフォーマーのようにはいかないこともあった。

スモールズのアバターは、スクリーンの外のデジタルな録画場面ではより「自然」だった。そこではスモールズの分身が90年代のブルックリンを歩き回っていた。その動きに不自然さはなく、服はしわくちゃで、デジタルで作られたものだとは言い難いほど自然に首を回したり手を動かしたりした。

この視覚的な偉業を支えるテクノロジーは何年もかけて作られたものだと、スモールズのアバター制作を担当したVFXディレクターのレミントン・スコットは言う。スコットは、映画『ロード・オブ・ザ・リング』でアンディ・サーキス演じるゴラムに命を与えたモーションキャプチャーのスタジオ、ハイパーリアル(Hyperreal,)の創業者である(この時は俳優が使われたが、スモールズのアバターにも同じ手法が取り …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中!年間購読料20%オフ!
人気の記事ランキング
  1. Promotion MITTR Emerging Technology Nite #32 Plus 中国AIをテーマに、MITTR「生成AI革命4」開催のご案内
  2. AI companions are the final stage of digital addiction, and lawmakers are taking aim SNS超える中毒性、「AIコンパニオン」に安全対策求める声
  3. What is vibe coding, exactly? バイブコーディングとは何か? AIに「委ねる」プログラミング新手法
  4. Tariffs are bad news for batteries トランプ関税で米電池産業に大打撃、主要部品の大半は中国製
▼Promotion
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る