死にゆくツイッター、「ニッチなコミュニティ」になるか?
イーロン・マスクはツイッター買収後、信頼・安全協議会を解散させ、白人ナショナリストや極右派のアカウントを復活させ、差別用語を使った会話の中心にいる。助けを求める人々を支援するといったかつての役割を、ツイッターはもう果たせないだろう。 by Abby Ohlheiser2022.12.20
人は一瞬のうちには死なない。そうではなく、死は停止の過程なのだ。心臓が拍動を止め、呼吸が止まり、器官が働きを止めるということが、徐々に起こる。脳も機能を停止する。脳死は恒久的なものだが、脳死後にも、心臓はしばらく拍動を続けることができる。
イーロン・マスクに買収されてからのツイッターは、そういった類の脳死状態にあるように思える。稼働し続けるためのプロセスはなんとか動きを止めていないが、マスクCEO着任以前のツイッターは二度と戻ってこないのだ。
ツイッターは12月12日に、2016年からツイッターに助言を与えてきた、世界的な市民権の提唱者、学者、専門家という幅広い人材からなる信頼・安全協議会を解散させた。一方でマスクCEOは、以前にアカウントを停止された白人ナショナリストのパトリック・ケーシーなどの有名な過激派を、再びツイッターに迎え入れた。研究者トラビス・ブラウンがまとめたデータによれば、100万人以上のフォロワーを持つ「男性の権利」アカウントである「メニニスト(Meninist)」、疑わしい新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療を支持し、ワクチン接種に反対して多くの注目を浴びた循環器専門医ピーター・マッカロー、2021年1月6日の米連邦議会議事堂襲撃に参加する様子をライブストリーム配信した極右派のメディア活動家ティム・ジオネットといった人々のアカウントも、復活された。
雇用縮小、コスト削減、ツイッターの安全基盤の廃止に対するマスクCEOの熱意が原因となって、多くの広告主が撤退している。ある時点で、広告クライアント上位100社の半数との取引を失ったと伝えられており、米国での1週間の広告収入予想を80%も下回ったという。マスクCEOのふるまいは、残っているブランドに難しい問題を突き付けている。ツイッターは、新型コロナウイルス感染症の誤情報に関するポリシーの施行を停止した。マスクCEOのツイッターに対するビジョンを気に入って投稿を再開する人もいるが、ツイッターに居続ける意義を見い出せずに、活動休止を宣言したり、別の場所に移行したことを発表したりする人もいる。ある推定によると、マスクCEOが就任してからわずか数日でツイッターは100万人のユーザーを失った可能性がある。アカウントをまだ削除していなくても、投稿を断念している人もいる。そうした中には著名人も含まれており、エルトン・ジョンは12月9日にツイッターを止め、誤情報に対するサイトの運営方針が変わったことを指摘した。
MITテクノロジーレビューが「ホアキシー(Hoaxy)」でキーワードの頻度と個々のアカウント間でのやりとりを分析した結果、ツイッターのネットワーク上でマスクCEOが、極右派のための実質的な監視者として新たな役割を果たしていることが示された。ホアキシーは、ツイッター上で …
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