ニューラル・ネットワークによる顔画像の高齢化手法が画期的進化
顔画像を機械学習で若くしたり年老いたりさせる手法が画期的に進化した。長年行方不明の人や、逃亡中の容疑者の現在の顔を生成するのに使えそうだ。 by Emerging Technology from the arXiv2017.02.22
人間の年のとり方は非常に興味深い。20代や30代、40代の顔を予測する技術は、多くの人を夢中にさせる。
すでに実現している手法はいくつかあるが、時間がかかるものばかりで、時間がかかればコストもかかる。安く、早く「顔を高齢化」できる手法があれば、使い勝手がよくなるだろう。
オレンジ・ラボ(フランス)のグリゴリー・アンティポフ研究員のチームは、顔年齢を簡単に生成する深層学習(ディープ・ラーニング)マシンを開発した。顔を高齢化できるだけでなく、若返りもできる。
最近の技術の進展により、研究チームの進捗が早まった。近年、コンピューター科学者により、現実感のある顔をさまざまに変化させられる深層学習機械が構築されている。この手法を用いれば、年老いて見えるリアルな顔面を合成できる。
しかし問題もある。高齢化の過程で、深層学習機械は個人の特徴を失わせてしまうことがあるのだ。そうなると年老いた顔が合成されても、人物を特定できなくなってしまうのだ。
研究チームは、この問題を解消する方法を思いついた。「顔面生成機」と「顔面識別機」の2台の深層学習機械が構築を連携させるのだ。まず2台のマシンに、0~18歳、19~29歳、30~39歳、40~49歳、50~59歳、60歳以上の年齢区分の写真を分析させ、年老いた時にどのような顔になるかを学習させる。
それぞれの年齢区分について、「インターネット・ムービー・データベース(IMDB)」やウィキペディアから得られた5000人の顔を学習し、年齢のラベルを付ける。こうして、深層学習機械は各年齢区分の顔の特徴を学ぶ。学習するのは抽象的な特徴であり、顔面生成アルゴリズムが他の顔に当てはめ、同じ年齢に見えるようにできる。
しかし、学習した各年齢区分の特徴を適用すると、個人の特徴が失われることがある。そこで2台目のマシン、顔面識別機の登場だ。高齢に合成された顔をチェックし、元の人物と見分けられるかどうかを確認する。もしできなければ、その画像は却下される。
研究チームは、この工程を「年齢条件別競争式ネットワーク(Age Conditional Generative Adversarial Network)」と呼んでいる。「adversarial(競争式)」なのは、2台のマシンが、生成と評価という逆のことをするからだ。
その成果は感銘に値する。研究チームは、IMDBとウィキペディアのデータベースから入手した、学習には未使用の1万件の顔画像に新手法を適用し、2つの画像が同一人物かどうかを見分ける「OpenFace」というソフトウェアにより、合成前後の画像を認識させた。その結果、他の顔面高齢化の手法では一致率が約50%だったのに対し、80%以上の確率で同一人物と認識されたのだ。
もちろん、若者の顔を高齢に見せるだけでなく、高齢者の顔の若返りもできる。
ただし、まだ実施されていない簡単なテストがある。若く合成された顔と、実際に若い時に撮影された写真の比較である。この手法の精度を示すよい試験になるだろうし、おそらく将来は実施されるだろう。
この手法の応用例としては、長年行方不明となっている人物を特定する用途などが考えられる、と研究チームはいう。もしアルゴリズムが公開されれば、格好の研究材料になるだろう。
参照:arxiv.org/abs/1702.01983: 年齢条件別競争式ネットワークによる顔面高齢化
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