赤コーナー、体重わずか5キュービット、メリーランド大学カレッジパーク校出身の量子コンピューター。青コーナー、対戦相手も5キュービット、出身はIBM。いよいよ量子コンピューター初の対戦だ。
2つの異なる基礎テクノロジーで作られた量子コンピューティング装置が、同じアルゴリズムを実行し、どちらが勝つかを競う、初の実験だと研究者は説明した。キュービットとは、量子でいう二進法のビットのことで、メリーランド大学の製品は電磁場で、IBMの製品は超伝導金属製で、イッテルビウム・イオンを捕捉する。
この実験は、2つの異なる物理に基づく製品で、同種のアルゴリズムを実行できるようになったことで可能になった。IBMが自社製品を公開し、研究者がオンラインでプログラムできるようにしたので、メリーランド大学の研究チームは自分たちのデバイスに同じ課題をさせてみたのだ。
対戦結果としては、IBMの製品のほうが高速だったが、信頼性は低かった。メリーランド大学の製品は、すべてを相互に接続したキュービットを使うため、互いに情報を共有できるが、IBMの製品は、中央ハブを通して情報を交換する必要があり、その過程で微妙な量子の状態が壊れてしまうことがあったのだ。
したがって、製品の性能は競争に耐えられる段階に達しておらず、対戦結果から、2つのテクノロジーのどちらかが優位かはまだ判定できない。だが、競合する量子テクノロジーから研究者が最適なほうを絞り込むには、性能を直接比較できることは、今後ますます重要になるだろう。
従来、量子コンピューターの対決相手は量子コンピューターではなく通常のコンピューターだった。特に、D-Waveの量子コンピューターは初期に量子理論に基づいているのか論争になり、何度も通常のシリコン・プロセッサーと比較され、いくつかの非常に特殊な課題では、はるかに高速であることを示した。
サイエンス誌の記事にあるとおり、今回の試験結果は、量子コンピューター同士で性能を比較するまでになった、という象徴的な意味しかない。量子デバイス同士で性能を直接比較できるようになったことは、量子コンピューティングがますます実現に近付いていることを示す証拠だ。
(関連記事: arXiv, Science, “IBM Shows Off a Quantum Computing Chip,” “Google Says It Has Proved Its Controversial Quantum Computer Really Works,” “D-Wave、2000量子ビットのコンピューターを発表”)