全長170キロのサウジの未来都市、衛星画像で進捗が明らかに
サウジアラビア皇太子肝いりのSF的な大規模都市「ザ・ライン(The Line)」の建設状況は、グーグル・マップなどでは今のところ確認できない。MITテクノロジーレビューはオーストリア企業から衛星画像を入手し、工事が進んでいることを確認した。 by Mark Harris2023.01.16
2021年初頭、サウジアラビア王国(以降、サウジ)のムハンマド・ビン・サルマン皇太子は「ザ・ライン(The Line)」を発表した。このプロジェクトは、長さ170キロメートル、高さ500メートル、幅わずか200メートルのゼロカーボン・メガシティに最大900万人の人々が住む、まるでゲーム「シヴィライゼーション・レボリューション」のようだ。幅200メートルの両側に鏡張りの壁のような建物が建設され、その間が居住スペースとなる。自家用車の乗り入れは禁止され、住民は地下鉄や電動エア・タクシー(電動航空機のタクシー)を使って移動する。
MITテクノロジーレビューはこのほど、この5000億ドル規模のプロジェクトの衛星画像を独占入手した。画像からは、ザ・ラインの広大な直線状の建設現場がすでに形になり始め、矢のようにまっすぐサウジ北部の砂漠と山々を抜けて伸びているのが分かる。場所によっては、深さ数十メートルほど掘削されている建設現場は、数百台もの建設車両と、おそらく数千人もの作業員で満ちあふれている。近くには作業員たちが暮らす広大な宿舎がある。
衛星画像とクラウドソーシングによる地図をオンライン・デジタル地図にまとめているオーストラリアのスタートアップ「ソア・アース(Soar Earth)」による衛星画像の解析では、すでに約2600万立方メートルの土や岩が掘削されたようだ。これは、ドバイにある世界一高い建物ブルジュ・ハリファ(Burj Khalifa)78杯分に相当する。10月に公開されたザ・ラインの建設現場の公式ドローン映像には、大量のブルドーザー、トラック、掘削機が地面を掘り返している様子が映し出されていた。しかし、グーグル・マップやグーグル・アースでザ・ラインの所在地へアクセスしても、岩肌や砂が見えるだけだ。
これらの画像の奇妙な欠落は、誰が高品質な衛星テクノロジーにアクセスできるのかという疑問を投げかける。そして、地球上で最大の都市建設現場がグーグル・マップに表示されないとしたら、他にも何か見えていないものがあるのではないだろうか。
ザ・ラインは未来的であると同時に、物議も醸している。批評家は、砂漠にこのような巨大な構造物を建設する実用面や環境面において、その利巧を疑っている。導入される予定の人工降雨、エア・タクシー、家事ロボット、再生可能エネルギーを利用した海水淡水化などのテクノロジーの多くは、まだ実証されていないからだ。また、建設現場の一部を居住区としていたフワイタット族の住民は、立ち退きを迫られた。報道によると、強制退去に抗議した一人はサウジの治安部隊に射殺され、さらに三人が最近死刑判決を受けたという。
にもかかわらず、2022年4月に着工し、6月にはザ・ラインの親会社ネオム(Neom)が、高速旅客鉄道と貨物鉄道のトンネル掘削契約を獲得した。
ソア・アースのアミール・ファーハンド創業者兼最高経営責任者(CEO)は、初期工事のドローン映像が公開された時、この5000億ドル規模のプロジェクトの高解像度画像はどこにあるのだろう、という疑問を抱き始めた。
グーグルはさまざまなプロバイダーから衛星画像を入手しており、その中には米国のランドサット(Landsat)や欧州連合(EU)のセンチネル2(Sentinel 2)など政府機関が運用する衛星のほか、マクサー(Maxar)やプラネット(Planet)などの民間企業が運営する衛星も含まれる。ランドサットやセンチネル2の低解像度画像はダウンロードでき、何らかの建設活動を確認できたが、少なくとも民間企業の1社は、3月のある時点でザ …
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