ネブラスカ大学オマハ校(ネブラスカ州)の4年生、ブレイバン・ヨルゲンソンは、祖母を自律自動車に自分が改造したホンダ・シビックで夜のドライブに連れ出したが、祖母は至って冷静だった。バックミラーに取り付けた自作の装置がブレーキやアクセル、ステアリングを制御し、内蔵カメラが道路標識と他の走行車を認識するのだ。
「祖母は心底驚いた、という感じではなかったです。これまで、さまざまなテクノロジーを見てきたからでしょう」とヨルゲンソンはいう。 だが、世間一般はインターネットからダウンロードした設計図とソフトウェア、部品代700ドルで組み立てられる自動運転システムを祖母以上に警戒している。ヨルゲンソンによると、ガールフレンドは安全性に納得しておらず、ボーイフレンドが十分に気を付けて作った自動運転装置なのに、運転機能を信頼してはいない。「彼女は、この装置のせいで事故が起きると心配しているんです」
近年、多くのテック企業や自動車メーカーが、改造車の路上テストに乗り出している。ヨルゲンソンの改造シビックは粗削りだが、個人レベルで製造された実験車両の先駆けだ。機械いじりが好きな世界中の改造マニアが、人間に代わって運転してくれるコンピューティング機器で自分の車を改良しようとしており、個人製の自動運転車が徐々に増えている。
自律走行システムを自作する動機は、楽しさやテクノロジーを使いこなしたいチャレンジ精神、運転を簡単にしたい願望だ。サンフランシスコのベイ・エリアに暮らすキキ・ジュエルは、課題学習の一環としてシボレー・ボルトを自律走行車に改造しようと奮闘中だ。ジュエルの夫が改造にとても協力的なのは、夫にとっても便利だからでもあるという。「夫は、私の今興味で自分の通勤が楽になると喜んでいます」という。
ヨルゲンソンとジュエルが自律自動車を作れるのは、2016年10月にサンフランシスコのスタートアップ企業コンマAIの創業者が腹立ちまぎれに起こした行動のおかげだ。コンマAIは、高速道路や渋滞中に自律走行できる999ドルの後付け型装置を開発していたが、米国国家道路交通安全局(NHTSA)から装置の性能 …