イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が、ジョージア州選出のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員(共和党)のツイッター・アカウントの凍結を解除した翌日、彼女は私(スコット・ウィーナー)のことを「共産主義のグルーマー(性的行為を目的に未成年者を手なずける人)」とツイートした。おそらく私がゲイで、ユダヤ人で、サンフランシスコ州選出の民主党の上院議員だからだろう。
グリーン下院議員はほかにも、トランスジェンダーの若者に対するジェンダー・アファメーション(性肯定)保護を禁止し、成人のトランスジェンダーがそのような保護を受けることを事実上不可能にする、自身が提出した連邦法案をツイートで宣伝した。私は過去にグリーン下院議員から同性愛やトランスジェンダーを揶揄する表現で攻撃された際、ソーシャルメディア上でさらなる暴言を吐かれたことがある。こうしたことに慣れていた私でさえも、さすがに今回の騒動の拡大は予想以上だった。そして、2022年11月19日に発生したコロラド州の性的マイノリティーの集まる「クラブQ(Club Q)」における銃乱射事件以降、騒動の膨張は特に顕著となったが、これはグリーン下院議員というよりも、ツイッターの新しいオーナーであるイーロン・マスクCEOに起因するところが大きい。
ツイッターの買収契約を締結した後、マスクCEOは、アカウントを凍結されていた悪名高い数人のユーザーをツイッターに復帰させた。グリーン下院議員のアカウント凍結解除の直前には、ドナルド・トランプ前大統領やカニエ・ウエスト(ユダヤ人に対する攻撃を示唆した「death con 3 on Jewish people」というツイートで有名なラッパー)のアカウントを復活している。ほかにも、他人の個人情報をネット上にさらす悪質な行為で締め出されていた極右集団のプロジェクト・ベリタス(Project Veritas)、「OK groomer」というハッシュタグでグルーマーという言葉を拡散し、ジョー・マッカーシーの赤狩りは十分ではなかったと発言し、あるユダヤ人のことを「ドクター・ランプシェード(反ユダヤ主義の表現として使われる、ランプシェードを作るためにユダヤ人の皮膚が使われたというホロコースト神話)」と呼ぶなどした数学者のジェームズ・リンジー博士、そしてレイプされた被害者にも責任があると発言したインフルエンサーのアンドリュー・テートなどのアカウントも復活している。
現在、マスクCEOはツイッターの投票に基づき、法律違反や悪質スパムへの関与がない凍結アカウントを復活させると約束している。しかし、「投票」には画像掲示板「4ちゃん(4chan)」の過激なユーザーたちが押し寄せたという。ツイッターは極めて混沌とした集団になってしまうかもしれない。例えば、白人至上主義者のニック・フエンテスは、「ユダヤ人は私たちにもっと良い態度を示すことを始めたほうがいいでしょう。なぜなら今後の展開は、ユダヤ人にとってずっと酷く、もっと悪くなっていくからです」と話した。ナチスや白人至上主義の指導者たちと密接な協力関係にあり、「ジーク・ハイル(ナチスの政治集会で繰り返された言葉)」と呼ばれナチス式の敬礼を受け、反ユダヤ主義的な言葉をパスワードにしている右翼系ジャーナリストのマイロ・ヤノプルスは、つい最近、「イエス・キリストを憎み、私たちの国家を憎み、ユダヤ人の『聖なる書』によれば私たち全員を自由に処分できる家畜と見なしているユダヤ人の権力者」について投稿した(ヤノプルスはグリーン下院議員の下でインターンとして働いている)。また、知名度はこれほどではないにしろ、暴徒、偏見主義者、ネットト上を暗躍する荒らしは無数にいる。そして、トランプ前大統領が人々を暴動に駆り立てたことは間違いなく法を犯していると考えれば、マスクCEOの「法律違反による排除」は、かなり限定的のように考 …