中国系米国人の水文学者であるシェリー・チェンの人生が、根拠のないスパイ容疑で一変してしまってからおよそ10年が経つ。そしてようやく今、彼女は正義といえるものを手に入れた。
11月10日、チェンの弁護団は、チェンに対する不当な起訴および米国立気象局による不当解雇に対して、米国商務省から180万ドルという歴史的な和解金を勝ち取ったと発表した。「政府の私に対する調査と起訴は、差別的で不当なものでした」とチェンは声明で述べた。「商務省はついにその不正行為の責任を負うことになりました。(中略)もう誰もこのような不当な扱いに耐え忍ぶことがあってはなりません」 。
米中間の対立が激しくなるにつれ、米国政府は中国人や中国系米国人の科学者に対する疑いを深めている。チェンの事件は、その初期の事例の1つである。今回の和解は、長年にわたって迫害を受けた末の、個人的な勝利であるとともに象徴的な勝利でもある。
チェンへの捜査と解雇はトランプ政権時代、中国の経済スパイ活動に対抗することを目的とした司法省の「チャイナ・イニシアチブ」が始まるよりも前のことだ。チャイナ・イニシアチブは経済スパイの摘発を目的としていたにもかかわらず、実際には中国系米国人の学術研究者を狙い、助成金詐欺や情報開示の不備などの容疑で多数逮捕している。だが、その後の刑事裁判に持ち込まれたケースは通常の連邦裁判の平均よりも少ない。
チェンの事件では、中国系米国人市民らが草の根擁護ネットワークを動員し、チェンが置かれている状況に対する一般市民の認識を高めるとともに、連邦議員への働きかけや法的弁護のための資金調達などに動いた。そうしたグループの1つが、後に「APAジャスティス(APA Justice)」となった。現在では、チャイナ・イニシアチブや人種プロファイリングに対して一貫して声高に反対する団体の1つとなっている。
2019年、中国系米国人 …