KADOKAWA Technology Review
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短編映像をリビングへ、YouTubeがテレビでTikTokに挑む
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YouTube wants to take on TikTok with Shorts videos for your TV

短編映像をリビングへ、YouTubeがテレビでTikTokに挑む

ユーチューブが短編動画「ショート」に本腰を入れている。11月7日には、同社のテレビアプリの標準ホームページに、ユーザーの過去の視聴履歴に基づくおすすめのショートの映像が表示されるようにした。 by Chris Stokel-Walker2022.11.14

ユーチューブ・ショート(YouTube Short、以降ショート)は、ティックトック(TikTok)に似た短編動画プラットフォームだ。スマートフォンなどのデバイスで毎月15億人以上のユーザーが短編コンテンツを視聴している現在、ユーチューブにとってショートは最新の関心事の1つとなっている。

11月7日、ユーチューブ・ショートはテレビに対応した。フルスクリーンの縦型動画をテレビに導入することで、視聴者数をさらに増やしたい考えだ。

新しいユーチューブのスマートテレビ・アプリでは、画面の上部にショートの映像が並ぶ。ショートはユーチューブのテレビアプリのホーム画面にも組み込まれており、横長の映像と並んで表示される。ユーザーの過去の視聴履歴に基づく映像が表示されるのは、スマホアプリやWeb版のショートのタブと同様だ。

テレビ版ユーチューブ・アプリのユーザー体験(UX)ディレクターであるブリン・エヴァンスは、「モバイル向けフォーマットをテレビで実現するにはどうすべきか? 適切な方法を探るのは難しい課題でした」と語る。

ユーチューブのコミュニティ&ショート担当UXディレクターであるメラニー・フィッツジェラルドによると、テレビアプリへのショートの統合には膨大な時間を費やしており、それこそがユーチューブにとってのショートの重要性を物語っているという。「ヴァイン(Vine)からミュージカリー(Musical.ly)、ティックトック、インスタグラム、ユーチューブと、数年にわたって短編動画の市場が進歩していく過程を見ていると、このフォーマットがこれからも利用されることになるのは明らかです」。

ユーチューブ・ショートのテレビ統合を実現するためにデザイナーが直面した大きな課題の1つは、ショートの動画をどこまで自動再生できるようにするかだった。現在の初期バージョンでは、視聴者は一度再生したショート映像を手動でスクロールし、テレビのリモコンにある上下の矢印ボタンを押して次の動画に移動する必要がある。

「一度見始めるとショートの映像が循環するという体験をどの程度自動化するべきかというのが、我々が取り組んでいたことの1つです」とエヴァンスは説明する。エヴァンスのチームは自動再生を採用しなかったが、今後のアプリのバージョンアップで変更する可能性は否定しない。

現在のテレビ版のショートの再生画面では、中央に縦長の映像が1本表示され、周りをその動画の全体に応じて色が変わる余白で囲むデザインとなっている。

だが、少なくとも今のところは試されていないことが1つある。この余白を広告で埋めることだ。ユーチューブの広報担当者であるスーザン・カドレチャは、MITテクノロジーレビューに対し、初めのうちは広告なしで利用できると語った。カドレチャは、いずれ広告が追加される可能性はあると述べたが、それがどのようにテレビに表示されるショート映像と組み合わせられるかは明らかにしなかった。

また、ユーチューブ・ショートのチームでは、今後のアプリのバージョンアップに向けて、テレビでの視聴にコメント機能を追加する方法を検討している。「スマホで残したコメントをテレビに映し出すようにできるかもしれません」とエバンスは言う。

ユーチューブの今回の発表は、ティックトックが独自のテレビ向けアプリの開発に乗り出したことを受けてのものだ。ティックトックのスマートテレビ・アプリは、2021年2月にフランス、ドイツ、英国で最初に導入され同年11月に米国とその他の地域に拡大された。ティックトックの場合、スマホアプリをほぼそのままテレビ向けにしたものだが、まだリビングルームに欠かせない存在というほどにはなっていない。

しかし、テレビでのユーチューブ体験にショートを組み込むという動きは、ユーチューブが将来に向けて短編動画をいかに重要視しているかを示している。メディア分析を手掛けるパーコール(PARQOR)の創業者兼社長のアンドリュー・A・ローゼンは、「デバイス間をまたぐ視聴者獲得の争いが起こっていることは非常に明確です」と話す。「インターネットに接続されたテレビにユーチューブ・ショートとティックトックが登場したことで、競争の状況がより一層複雑なものとなります」。ティックトックの先行を許したユーチューブは、追いつくことを決意したようだ。

テレビでのユーチューブ利用に短編動画を追加することがユーザーにどのように受け入れられるかは、この構想のもとに動いているチームにもまだ確信がない。「人々がいつ、どのようにショートの映像を視聴するかはまだわかりません」とエヴァンスは認める。 しかし、非公式の世論調査や定性調査、グーグル・コミュニティでのテストによると、「テレビで ユーチューブを見ている人々は、ショートに対して非常に肯定的な印象を持っている」ことがわかっているという(ユーチューブは、現在平均的なユーザーがテレビでユーチューブを見ている時間に関する独自のデータの提供を拒否し、世界中の視聴者が1日7億時間ユーチューブのコンテンツをテレビで見ているというニールセンのデータに言及した)。

「リビングルームでの映像視聴を一変させるものとなるのか。その答えは『はい』でもあり『いいえ』でもあります」と前出のローゼン社長は言う。「今後15秒から60秒の動画が、従来のあらゆるメディア・ストリーミング・サービスの競合となること、そしてネットフリックスはテレビで視聴されるコンテンツに何十億も投資していることを考えると、答えは『はい』です。ただ、新しい視聴形態のデフォルトとなる状態にはないことを考えると、『いいえ』になります」。

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クリス・ストークル・ウォーカー [Chris Stokel-Walker]米国版 寄稿者
米国在住のフリーランスのテクノロジー&カルチャー・ジャーナリスト。著書に『ティックトック・ブーム(TikTok Boom: China's Dynamite App and the Superpower Race for Social Media)』がある。
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