KADOKAWA Technology Review
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What a Veteran Film Critic Learned from Watching VR Movies

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映画は20世紀を代表する大衆芸術だった。ではバーチャル・リアリティは21世紀を代表する娯楽になるだろうか? by Ty Burr2017.02.20

VR版映画『カサブランカ』を見たいだろうか?

馬鹿げた質問だが意味はある。実質現実(VR)は文化的にも美学的にも従来の映画とは似ても似つかない。なぜ異なるのか理解するのに一番いい方法は、1942年制作のワーナー・ブラザースの古典「平面」作品を映画館の席に座って見るのではなく、VRゴーグルを装着して、没入型で体験していると想像してみればいい。

https://www.youtube.com/watch?v=9YwBMWvbE9A

カサブランカの舞台「リックス・カフェ・アメリカン(Rick’s Café Américain)」から立ち去れる観客はまずいないだろう。観客はバーテンダーのサーシャについてカウンターの後ろに回り、ルーレット・テーブルではディーラーのエミールの近くに佇み、隣でサムが『時の過ぎ行くままに(As Time Goes By)』をピアノでもう一度弾いてくれるのだ。私なら、ピーター・ローレ演じるウガーテのすすり泣くような演技に目が釘付けになるだろう。では、ドラマの中心であるリックと、昔の恋人イルザ・ルンドとの恋の再燃、リックの自己犠牲的結末はどうかって? おそらくマイケル・カーティス監督とワーナー・ブラザースが見事に創造したカサブランカの世界を探検するだけで観客は満足してしまい、ストーリーの行く末にまで関心は持たないだろう。ただし、『トゥルーマン・ショー』のジム・キャリーのように、作り物の世界の壁に頭をぶつけて我に返るかもしれないが。

https://www.youtube.com/watch?v=c3gI9ms8Fdc

VR版『市民ケーン』も、主人公ケーンの人生の根底に追ろうと、生涯のさまざまな出来事が時系列を無視して突発的に想起されていく調査報道作品として楽しめるかもしれない。『ゴッドファーザー』のVR版では、ドン・コルレオーネの家族と親戚の住む幽霊屋敷を歩き回れる。三男のマイケル・コルレオーネが徐々に頭角を現し、マフィアのボスになるドラマが描かれるが、その話は、VR体験全体の縦糸と横糸の中の細い一本の糸でしかないのだ。

VRは決して、映画を新しくする何か、にはならない。まったく別のものになるのだ。ではいったい何になるのだろう。さらに、受動的に物語を楽しみ、結末に向かう一本道に次々とシーンが続き、案内されることに慣れた観客が、映画とは別の何かを素晴らしいと思うだろうか。言い替えれば、私たちは新しいメディアが現れたとき、一定の水準まで成熟してから評価するのだろうか。たとえば1903年に初めて映画独特の技法で撮影された作品のひとつ『大列車強盗』を観た観客が、後になってそれが「映画」という新しい様式だと理解できたように。

https://www.youtube.com/watch?v=Bc7wWOmEGGY

私は映画評論家・脚本家として35年間、映画界を見続けているが、自分自身、すでに絶頂期を過ぎたメディアの様式から恩恵を得た、莫大な数の観客のひとりだ。絶頂期を過ぎたメディアとは、約2時間、通常は物語がスクリーンに映写され、多数の観客が同時に見る、という形式のことだ。現在は、文化的にも技術的にも大変革の時代であり、従来の映画は前世紀のアートだ。今、配給方法はテレビやコンピューター、スマートフォンなど多岐にわたり、作品の長さも熱心なファン用の数時間にわたるテレビ版から、10秒間のスナップショット版まで多種多様になっている。

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実質現実はかつて憧れの的であり『ブレインストーム』(1983)、『バーチャル・ウォーズ』(1992)、『マトリックス』(1999)、『アバター』(2009)といったSF映画の専門領域だったが、映像処理上の問題があったり、バーチャル空間が未完成で登場人物が空間を移動しようとすると気分が悪くなったりと、完璧なテクノロジーとしては描かれていなかった。吐き気を感じながらでは空想世界を楽めるはずがないが、最近になって現実は映画を超えたようだ。オキュラスのリフト、サムスンのGear V12、ソニーのプレイステーションVR、HTC Vive等のVRゴーグルを装着すれば、三次元空間に飛び込んでストーリー展開やゲーム空間内を自由に移動できるし、気分も悪くならない。こうしたVRゴーグルは、数十年の歴史があるこの分野の最新モデル(そういえば、私は1994年にエンターテインメント・ウィークリーでサイバーマックスというVRゴーグルを評価したことがある)であり、さかのぼれば1968年にアイバン・サザランドが開発した最初のゴーグル型ディスプレイに行き着く。ただし、サザランドの「ヘッド・マウント・ディスプレイ」は巨大な装置で、あまりに重かったので天井にボルトで留めて吊るしてあり「ダモクレスの剣」とも呼ばれていた。

https://www.youtube.com/watch?v=NtwZXGprxag

ところで、ビジュアル・アーティストやゲーム開発者、映画製作者等、作品を制作する側はどうすればVRがうまくいくか理解しようとしている(「グーグルの VR作品責任者が語る 映像体験の未来」参照)。最もカネになるのはゲーム分野の開発だとわかりきっている。架空リアリティの探検や対話こそ、大多数のビデオゲームのプロットだからだ。もっと物語的なVR作品はオン …

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