ツイッター、イーロン・マスク買収で100万人規模減少か
イーロン・マスクによる買収完了を受けて、ツイッターの利用を実際にやめる人が増えているようだ。外部企業の推計では、10月27日から11月1日の間に通常の倍以上のユーザーがツイッターの利用をやめているという。 by Chris Stokel-Walker2022.11.05
10月27日、イーロン・マスクによるツイッター買収が完了し、「鳥は自由の身になった」という同氏のつぶやきでそのことが確認された。それから数日の間に、新しいオーナーに不満を持つ多くの ツイッター・ユーザーが、ツイッターの利用中止を強く匂わせている。
ユーザーたちは常日頃からツイッターをやめると脅しているが、多くの場合はそれを実行に移せていなかった。だが、新しいデータを見ると、今回は膨大な数のユーザーが本当に同プラットフォームの利用中止を進めているようだ。
310万以上のツイッター・アカウントと、その行動を毎日分析してツイッター上の不正行為を追跡している企業「ボット・センチネル(Bot Sentinel)」によると、10月27日から11月1日の間に約87万7000 アカウントが停止され、さらに49万7000アカウントが凍結されたようだ。これらの数字は、通常の2倍以上となる。
「ユーザーによって停止されたアカウントと、ツイッターによって凍結されたアカウントが増えていることが確認できます」。ボット・センチネルの創業者兼CEO(最高経営責任者)であるクリストファー・ブージーは話す。
ブージーCEOとボット・センチネルは、マスクCEOのツイッター買収後に自らアカウントを停止したか、アカウントを凍結されたユーザーの一定割合を分析。それをツイッター全ユーザーベース(現在約2億3700万という「収益化可能な日常利用ユーザー」)にその割合を適用して数字を導き出した。
ボット・センチネルは10月27日から11月1日の間に、監視対象の1万1535アカウントが停止されたことを把握。さらに6824のアカウントが凍結されたことを確認している。アカウントの凍結とは、活動がなかったり、不正行為であったり、サイト利用規約違反であったりするアカウントを、ツイッター側が削除することだ。これはボット・センチネルが監視するアカウントの約0.59%に相当する。 マスクCEOがツイッターを買収する前の週に、停止もしくは凍結されたアカウントはわずか5958だった。買収後にアカウントの減少数は2倍以上になったわけだ。
「アカウントを停止するユーザーが増えたのはイーロン・マスクによるツイッター買収に人々が動揺し、これに抗議してアカウント停止に踏み切った結果だと考えています」。ブージーCEOはこう指摘し、ユーザーがツイッターの利用終了を宣言している事例を示した。
スイス連邦工科大学ローザンヌ校の研究者であるマヌエル・リベイロもこれに同意する。リベイロは、オルタナ右翼とその関連団体が、モデレーション・ポリシーやアルゴリズムから受けた影響など、ニッチなインターネット・コミュニティについて研究している。「多くのユーザーが実際にマストドン(Mastodon)などの他のプラットフォームへの移行を試みているようです」。
ツイッターにコメントを求めたが回答は得られなかった。マスクCEOにも電子メールを送ったが、反応はなかった。
ボット・センチネルのブージーCEOは、ツイッターによって凍結されたアカウント数も増えていると考えている。このことは、マスクCEOのコントロール下となった同サイトで、一定割合のユーザーが現在つぶやける内容の可否を試すためにつぶやいている憎悪表現が要因となっている。「ツイッターに凍結されるアカウント数が増加しているのは、ツイッターの規則に故意に違反して『言論の自由』の限界を押し広げられるかどうか見ているアカウントに、同社が対処しているからだとも考えています」。もっとも、ツイッターによって凍結されるアカウントのどの程度の割合が、言論の自由に関する同プラットフォームの規則に違反するものか、あるいは(ボットなどの)不正なものであるかは不明だ。
調査グループのネットワーク・コンテイジョン研究所(Network Contagion Research Institute)による別の分析 では、ツイッター上での不適切用語の使用がマスクCEOによる買収完了発表後の12時間で約500%増加していることが分かっている。同時に、侮蔑的な「コピーパスタ」(一連の文章がコピー&ペーストされること。「4ちゃん」などの画像掲示板のユーザーに人気)が投稿されている例も散見されている。
憎悪表現の増加は、ツイッター社内の信頼・安全チームのメンバーの多くが、コンテンツ・モデレーション・ツールへのアクセスを凍結された直後から始まった。ブルームバーグの報道によると、投稿を削除できるツールへは現在わずか15人しかアクセスできないという(通常は数百人に権限がある)。ツイッターで安全性・健全性部門を統括するヨエル・ロスは、「インサイダーリスクを低減するため」として、経営体制の移行手続きの一環として計画されていたものだと投稿している。ツイッターのプラットフォームには、人間のモデレータと一緒に機能する自動モデレーション・ツールもあるとリベイロは指摘する。
デルフト工科大学に勤め、iDRAM研究所(オンライン・コミュニティ周辺を分析する複数機関による調査グループ)のコアメンバーでもあるサヴァス・ザネトウ助教授は、こうした動きはツイッターを取り囲む大きな問題の最初の兆候だと言う。「同プラットフォームからのユーザー大量流出の第一章です。新生ツイッターが変更を発表し始めれば、ツイッターからのユーザー流出の新たな波が発生する可能性は高いでしょう」。
ブージーCEOは、ツイッターの敵対的な環境から、長期的にはユーザーが徐々に去っていくことになるだろうとも考えている。「ユーザーが大挙して自分のアカウントの削除を続ければ、プラットフォームにとって非常に大きな問題となるでしょう。左翼傾向や非主流の人々が去ったツイッターは、パーラー(Parler)やトゥルース・ソーシャル(Truth Social)と違わないものになります」と言う。
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- 米国在住のフリーランスのテクノロジー&カルチャー・ジャーナリスト。著書に『ティックトック・ブーム(TikTok Boom: China's Dynamite App and the Superpower Race for Social Media)』がある。