インポッシブル・フーズ、「代替ヒレステーキ」間もなく発売か
植物由来の代替肉を製造する「インポッシブル・フーズ(Impossible Foods)」のパット・ブラウンCEOは、実現が難しいとされるステーキの試作品は完成しており、「本当においしい」と語った。 by Tammy Xu2022.10.17
植物由来の代替肉では実現が難しいとされてきた「ステーキ」の分野でも、進展があった。しかも普通のステーキではなく、フィレミニョン(厚みのあるヒレ肉)だ。
10月12日にMITテクノロジーレビュー[米国版]が開催した「ClimateTech(クライメート・テック)」において、インポッシブル・フーズ(Impossible Foods)のパット・ブラウン創業者兼最高経営責任者(CEO)は、自社のステーキ商品を消費者の手元に届けられる正確な時期こそ言えないものの、試作品はすでに完成しており、今年はじめに自身が試食したことを明らかにした。
「自社のフィレミニョンの試作品を味見しました。本当においしかったです」。ブラウンCEOは、MITテクノロジーレビューの気候・エネルギー担当上級記者のジェームズ・テンプルにそう語った。
インポッシブル・フーズの使命は、肉を食べる消費者を納得させることだ。そこには、より環境に優しい代替肉をつくるだけでなく、味という観点でも本物の肉に匹敵、もしくは上回るというビジョンがある。ブラウンCEOいわく、自社製品が同等の動物性食品と「直接対決」できると見なすまでは、同社が商品を発売することはないという。
これまでの最大のハードルは、しかるべき食感を実現することだ。ステーキの構造を再現するために、牛ひき肉の製造工程を微調整する必要があったとブラウンCEOは語る。
インポッシブル・フーズは、ひき肉やソーセージ、鶏肉以外の分野に乗り出し、ステーキ商品に挑戦するという野心を2019年に「ザ・スプーン(The Spoon)」で初めて明かした。それに先立ち、コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)で「バーガー(Burger) 2.0」を披露した。ブラウンCEOは、自社の壮大な計画について2020年にも本誌の取材に語っており、代替ステーキを作るという挑戦について詳しく述べている。
「本当においしいステーキの特徴とは何でしょうか。私は、ステーキならではの筋肉構造と質感を最高の状態で備えたものが必要だと考えています。つまり、特定の物理学的性質を正確に作り出す必要があるのです。ステーキには、タンパク質で出来た不織布のような結合組織があり、間質性の脂肪組織があります。 そして、脂肪組織においては、物理学的特性はある程度重要であり、口溶けのパターンや風味の化学も肝となります」。
それ以降、ライバル企業が独自のステーキの試作品を生み出したり、開発計画について発表したりしてきた。競合社のビヨンド・ミート(Beyond Meat)は、スーパーマーケットのジュエル・オスコですでに「ビヨンド・ステーキ」を販売しており、10月中旬にはタコベルとの提携商品である「ビヨンド・カルネ・アサーダ・ステーキ」を一部店舗限定で提供する。
ブラウンCEOは最後に、本当の試金石は自分がヒレ肉をどう思うかではなく、消費者がどう思うかだと語った。
「期待してお待ちください。間違いなくお届けします」(ブラウンCEO)。
インポッシブル・フーズのその他の計画については、推測するしかない。当然ながら、フィレミニョンで終わりというわけではないだろう。ブラウンCEOも、「あなたが想像できるものはすべて取り組んでいます」と話している。
(取材協力:エイミー・ノードラム)
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