「ハリスコの方々へ。遺体の秘密墓地の場所をご存知ですか」。この問いかけは、2月にメキシコの人口の多い州の人々に向けて、ツイッターに投稿された。投稿者は、非営利団体のマドレス・ブスカドラス・デ・ソノラ(Madres Buscadoras de Sonora、ソノラ州の捜索する母親)。行方不明になった大切な人を捜す母親たちの組織だ。
いくつもの反応があった。秘密裏の埋葬を目撃したという地域の人々が、空き家の下にある墓地を指し示したグーグル・マップを添えて名乗り出てきた。埋葬に関与したと言ってざんげをする「ロス・アレペンティドス」(悔恨する者)からのメッセージも届けられた。マドレス・ブスカドラスの女性たちは、つるはしやシャベルを抱えてハリスコ州トラヨムルコ・デ・スニガのチュラビスタあたりにやって来た。そして掘り始めた。
メキシコは誘拐に悩まされてきた長い歴史がある。10月5日の時点で、メキシコでは10万5984人が失踪者として公式に記録されている。その3分の1以上が、この数年間のアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領、通称AMLOの現政府下で消えている。行方不明者の多くは、誘拐されたか、犯罪組織に強制的にかかわらされたと考えられている。大半は死亡している可能性が高く、遺体は田舎や近郊、農地の秘密の墓地に埋葬されているか、米国・メキシコ国境近くの広大な空き地に散らばっている。遺体安置所、共同墓地、大学には、5万2000体を超える身元不明の遺体も横たわっている。およそ4分の1は女性と少女で、性的搾取、人身売買、フェミサイドの被害者である可能性が高い。
AMLO政府は過去の政権とは一線を画し、この危機の規模を公に認識し、捜索と身元確認の取り組みを強化した。2019年3月、政府は全国捜索システムを立ち上げた。行方不明者の捜索において政府機関間の連携を図ることを目的とした機構だ。このシステムが始動したとき、全国捜索委員会の責任者であるカーラ・キンタナは、家族たちが現場で「何年間も、事実上単独で」実行してきた作業について理解した。そして、「二度と孤独にしません」と約束した。
だが、当局は依然として行方不明者の捜索におよび腰だ。そのため、作業は家族の肩にかかり続けている。現在、家族による捜索活動の多くはソーシャルメディア上で実施されている。行方不明の親族の写真を広く配布し、捜索活動を企画し、さらにこの問題への関心を促す。マドレス・ブスカドラスは、ワッツアップ、ツイッター、フェイスブックを使って、市民を巻き込み、行方不明者の捜索に勢いをつけるためのプラットフォームを作成した。グループは、行方不明者や墓地かもしれない場所の情報を毎日受け取っている。数が多すぎて、すべてを調査するにはリソースが足りないほどだ。
活動には、難しい課題がついてまわる。チュラビスタで遺体の捜索を始めたマドレス・ブスカドラスのメンバーは、地元当局に厳しく監視され、写真を撮られた。だが、ハリスコ州知事と面会すると、翌日から地元警察が捜索に加わった。最終的に、マドレス・ブスカドラスは巨大なゴミ袋221個分の人体の部位を発見した。検察庁は4月までに公式の集計で最大44体の遺体が見つかったと述べたが、袋の調査はまだ続いている。
自分たちで捜索を進めている家族たちは、組織犯罪と政府関係者の両方から反対されたり、脅されたりもする。組織犯罪グループと共謀している政府関係者は、自分の地域で行方不明者を捜すのを嫌がる可能性があるのだ。家族の圧力を受けて、2017年に承認された国の画期的な「強制失踪一般法( General Law of Forced Disappearance)」のもと、当局は行方不明者の捜索と犯罪捜査を迅速に進めることを義務づけられた。だが、何千もの家族にとってそれはまだ現実になっていない。「多少は変化が見られましたが、当局側の状況はずっと同じです。『こっちの担当ではない、他の責任だ』と言って、要望をはねのけます」。全国捜索システムの諮問機関である全国市民評議会メンバーのマルティン・ビジャロボスは言う。
だが、メキシコ社会の中には、家族の窮状に応えようとするところも出てきている。「この活動では、ソーシャルネットワークが非常に役立 …