オキュラスの研究者は、仮想世界は、ヘッドセットだけで体験できるとは考えていない。より本物の現実に近づけるために、実質現実内の物体の触感や、近づくときの方向感を再現する機器の開発に取り組んでいる。
オキュラスとフェイスブックが共同開発中の「ハプティックウェーブ」(HapticWave)は、電磁アクチュエーターに載せられた円形の金属プレートが振動し、プレートの中央に手を置いたユーザーが、物体の手触りを感じたり、何かが近づていくる感覚を味わえる。
「ヘッドセットと空間オーディオ機器によって、だいぶリアルな感覚になります。従来のハプティック(触覚に作用する)機器の多くは、方向情報を含まないフィードバックで、たとえばスマートフォンのバーチャルキーボードを入力しても押し込んだ感覚がありません。また、従来の機器は、グローブなどの装着器具に埋め込まれているのが一般的でした」(オキュラスのラビシュ・メラ研究員)
将来、ハプティックウェーブが商品化されるかは未定だ。メラ研究員も、それについてはコメントできないという。オキュラスの研究者の予想では、ハプティックウェーブが使われるのは、仮想空間でテーブルゲームをプレイする時などだという。プレイヤーは、近くを通り過ぎる怪物の歩みや、仮想空間に居合わせた他のユーザーの動作を感じることになる。
「超感覚的な刺激をユーザーに与えるのがこの機器の目標です。仮想空間内の物体をよりリアルに感じさせたいのです」(メラ研究員)
ハプティックウェーブのターンテーブル型金属プレートは、アクチュエーターによって屈曲波を発生させ、特定の方向からユーザーに送る。この間、振動加速度計が金属板の状態を感知し、フィードバックを送ることで、アクチュエーターが調節される。低周波振動によって、重たい物が他の物体と衝突する感覚が引き起こされ、高周波振動は小さな物が他の物と衝突する感覚を再現する。
ハプティックウェーブが作り出す感覚がどれだけリアルなのか体験できるよう、オキュラスの研究者は専用のデモソフトも開発した。VRヘッドセット「Oculus Rift」と空間オーディオ機器(音の方向感を再現するもの)を同時に使うデモソフトは、アニメーションのボールがテーブルを跳ねながら横切る内容だ。画面内に現れたボールが近づく音が聞こえるだけでなく、金属板の振動によって、ボールがどこから近づいてくるのかも、ユーザーに伝わる。ユーザーは、キーボードでボールの動きを操作できる。デモは、7月下旬に開催のシーグラフ (コンピュータ グラフィックスとインタラクティブ技術に関するカンファレンス)で公開される予定だ。
メラ研究員は、金属板をより大きく薄くすることで、発生する振動がどう変化するかや、振動の周波数でモノを区別する人間の能力についても、より詳しく調べたいそうだ。