EU「AI責任指令」、テック企業への損害賠償請求権を規定
知性を宿す機械

The EU wants to put companies on the hook for harmful AI EU「AI責任指令」、テック企業への損害賠償請求権を規定

消費者がAIシステムで被害を受けた場合、AI企業に対して損害賠償を求める権利を認める新法案が欧州連合から発表された。消費者たちの権利団体や活動家からは法案では不十分だとの声も聞かれ、テック企業の攻防が激しくなりそうだ。 by Melissa Heikkilä2022.10.05

欧州連合(EU)は、人工知能(AI)企業に対する損害賠償の訴訟を容易にするために、新たな法律を作ろうとしている。9月28日付けで発表されたこの法案は、AI開発者が危険なシステムを世に送り出すことを防ぐための欧州の取り組みの一環であり、数年後に法制度化されることになりそうだ。イノベーションに水を差す結果になりかねないとテック企業が不満を漏らす一方で、消費者活動家はまだ不十分だと訴えている。

強力なAIテクノロジーは、人々の生活、人間関係、社会をあり方をますます決定づけるようになり、その弊害は十分に実証されている。ソーシャルメディアのアルゴリズムは誤情報の拡散を後押しし、顔認証システムはしばしば非常に差別的で、ローンの承認可否に使用される予測AIシステムはマイノリティに関する精度が低くなりがちだ。

「AI責任指令(AI Liability Directive)」と呼ばれるこの新たな法案は、同時期に施行が予定されるEUの「AI規制法案(AI Act)」に実効力を与えるものとなる。AI規制法案は、警察活動、人材採用、医療などのシステムをはじめとする、人に危害を与える可能性が最も高い「高リスク」のAIシステムの使用について、特別なチェックを義務付けるものだ。

AI責任指令は、人や企業がAIシステムから被害を被った場合、その損害賠償を請求する権利を認める。目的は、テクノロジーの開発者、生産者、利用者に責任を課し、そのAIシステムがどのように構築され訓練されたかの説明を義務付けることにある。規則に従わないテック企業には、EU全域で集団訴訟を起こされるリスクがある。

例えば、履歴書を選別するAIシステムが自分を差別していると証明できる求職者は、裁判所に要求してシステム情報へのアクセスをAI企業に認めさせ、責任者を特定し、問題点を突き止められるようになる。そしてその情報をもとに、訴訟を起こせる。

法案は、EUの立法プロセスを通過するため、紆余曲折を経る可能性があり、成立にはまだ少なくとも2年はかかる。欧州議会のメンバーや欧州委員会による修正が加えられ、 …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。